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定額減税の実務ポイント特集

定額減税の仕組みと留意点について(「令和6年度税制改正の実務ポイント」セミナーより)

令和6年6月から開始の【定額減税】。

去る4月11日に開催されました、税理士法人アズール主催「令和6年度税制改正の実務ポイント」セミナーでも詳しく解説しております。

ご参加頂きました皆様は復習に、残念ながらご参加が叶わず見逃してしまった方も是非、動画にて改めて実務ポイントをご確認下さい。


レジュメはこちらから(2024.4.11 令和6年度税制改正の実務ポイントセミナー)

1.定額減税の概要

 令和6年度税制改正により所得税・個人住民税の定額減税が6月から実施されます。


 政府は、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和するため、デフレ脱却のための一時的な措置として定額減税を実施することを決定し、納税者及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の合計4万円を減税することとされました。

 以下概要についてご説明します。


●定額減税の対象者

定額減税の対象となる人は、納税者である居住者で、令和6年分の合計所得金額が1,805万円以下の人(給与収入のみの場合は、給与収入が2,000万円以下である人)です。


●定額減税額

定額減税額は、次の金額の合計額となります。

(1) 本人(居住者に限ります。)・・・所得税3万円、個人住民税1万円

(2) 同一生計配偶者及び扶養親族(居住者に限ります。)・・・1人につき所得税3万円、個人住民税1万円

                ※扶養控除の場合と異なり16歳未満の扶養親族も含まれます。


●給与所得者の場合

(1)所得税

 6月以後の給与等から源泉徴収税額を控除する「月次減税事務」と、年末調整で精算する「年調減税事務」により定額減税が行われます。


 月次減税事務では、令和6年6月1日時点で扶養控除等申告書を提出している給与所得者(甲欄適用者)に対して、その給与支払者の下で、令和6月6月1日以後最初に支払われる給与(賞与を含みます。)の源泉徴収税額から控除し、控除しきれない部分の金額は、以降令和6年中に支払われる給与等に対する源泉徴収税額から順次控除されます。月次減税事務では、合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる者に対しても月次減税を行います。なお、令和6月6月1日時点の扶養親族等の数に変更があった場合でも、月次減税での増額は行わず、定額減税額の差額の精算は、年末調整で行います。


 年調減税事務では、令和6年分の年末調整の際に、年税額から定額減税額を控除します。合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる人については、定額減税額を控除しないで年末調整を行うことになります。


(2)個人住民税

 給与所得に係る特別徴収では、令和6年6月分は徴収されず、定額減税後の年税額を令和6年7月分から令和7年5月分の 11 か月で均して徴収されます。市区町村からの特別徴収税額通知には、定額減税後の金額が記載されます。


●事業所得者又は不動産所得者の場合

(1)所得税

 令和6年分所得税の第1期分予定納税額(7月)から、本人分に係る定額減税額を控除します。控除しきれない部分の金額は第2期分予定納税額から控除し、それでも控除しきれない場合は確定申告で精算します。扶養親族等に係る定額減税額は、確定申告で控除しますが、予定納税額の減額申請の手続きにより、第1期分予定納税額から控除を受けることができます。


(2)個人住民税

 令和6年分の個人住民税に係る第1期分の納付額から定額減税額が控除されます。控除しきれない部分の金額は、第2期分以降の納付額から順次控除されます。


●公的年金等の受給者の場合

(1)所得税

 令和6年6月1日以後最初に支払われる公的年金等の源泉徴収税額から控除し、控除しきれない部分の金額は、以降令和6年中に支払われる公的年金等の源泉徴収税額から順次控除されます。


(2)個人住民税

 令和6年10月1日以後最初に支払われる公的年金等につき特別徴収されるべき個人住民税から控除します。控除しても控除しきれない部分の金額は、以降令和6年度中に特別徴収される各月分の特別徴収税額から順次控除されます。


参考:国税庁「定額減税特設サイト」

https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/index.htm 


2.調整給付

 デフレ完全脱却のため総合経済対策における物価高の支援の一環として、納税者及び同一生計配偶者又は扶養親族1人につき、4万円(令和6年分の所得税から3万円・令和6年度分の個人住民税所得割から1万円)の「定額減税」が行われます。 

その際、定額減税しきれないと見込まれる方に対しては、当該定額減税しきれない額を1万円単位に切り上げ算定した「調整給付金」が支給されます。


1. 調整給付の対象となる方への給付について

調整給付は、定額減税で引ききれないと見込まれる方々に対して行われます。給付は以下のように行われます。

・当初給付: 2024(令和6)年夏以降、個人住民税が課税される市区町村において、2023(令和5)年の所得状況に基づき、給付額が支給されます。

・不足額給付: 2024(令和6)年分の所得税と定額減税の実績の額が確定した後、給付が不足する場合に、追加で給付されます。確定後は2025年以降に支給されます。



2. 給付額の算定方法

調整給付の算定には、所得税と個人住民税の控除不足額を足し合わせ、1万円単位で切り上げて算出されます。


3. その他の重要事項

・手続き: 調整給付の受給者には、市区町村から確認書が送付される見込みです。確認書の記載内容をご確認の上、必要事項を記入して返送をすることとなります。

・所得税等への影響: 給付金は所得税や個人住民税等を課されず、生活保護制度においても収入として認定されません。


参考:内閣官房 トップページ>各種本部・会議等の活動情報>新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置>よくあるご質問

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/benefit2023/FAQ/index.html#Q11 


参考:名古屋市 トップページ>暮らしの情報>税金>市税に関するお知らせ>定額減税、低所得者支援及び定額減税補足給付金>令和6年度 定額減税補足給付金(調整給付)

https://www.city.nagoya.jp/zaisei/page/0000173496.html



3.よくある質問

 いよいよ6月から定額減税がスタートしました。6月支給の給与明細で減税額を確認された方も多いのではないかと思います。また給与担当者にとっては初めての月次減税事務とあって確認に手間も時間もかかり大変な作業だったことと思います。


 当事務所にも6月の給与計算時にいくつか月次減税事務について質問がありました。事前に説明をしていたものもありますが、あらためて給与計算をする際に迷うこともあったようです。今月はそのいくつかをご紹介しますので参考にしてください。



Q1 パート・アルバイトのうち、配偶者の扶養内で働いている人は配偶者の方で定額減税してもらうから、自社では残業等により源泉徴収税額が発生する月があっても定額減税しなくてもいいのですよね。


A1 そのパート・アルバイトの従業員等が「扶養控除等申告書」を提出し、基準日(R6.6.1)に在職していれば月次減税の対象となります。わずかな源泉徴収税額でも月次定額減税をしてください。年末調整後本人の源泉徴収税額が発生しなかった場合には、月次減税事務により0円となっていた源泉徴収税額について過不足は生じませんので年末調整での還付はありません。



Q2 役員給与の源泉徴収で定額減税がされましたが、予定納税通知書でも定額減税額が控除されていました。二重で控除されることになるのでどうしたらいいですか。


A2 確定申告等を通じて、二重取りは解消されるので、事業所と納税者本人が何らかの調整をすることは不要です。



Q3 従業員が7月に出産により扶養親族が1名増えました。いつの給与から月3万円の定額減税額を増やせばいいですか。


A3 月次減税額は途中で変更(増額)しません。最初の月次減税事務以後に同一生計配偶者と扶養親族の数に異動があった場合には、年末調整または確定申告で調整します。



Q4 R6の源泉徴収税額では定額減税額を控除しきれなかった場合には調整給付があると聞きました。給付を受けるために事業所、納税者本人いずれかで手続きが必要でしょうか。


A4 定額減税可能額が令和6年分推計所得税額(R6年度分個人住民税課税情報(R5.1月から12月までの所得や控除など)をもとにR6年度分の所得税額を推計して算出したもの)を上回る場合には、調整給付として上回る額の合算額を基礎として1万円単位で切り上げた額が市区町村から支給されます。納税者宛に市区町村から届いた申請書類を返送する手続きが必要で、申請期限もあります。例えば名古屋市の場合は8月中に発送されるようです。この調整給付を受けることについて、事業所で行う手続きはありません。



 なお、R6年分所得税額と定額減税の実績額が確定した後、調整給付額に不足が生じる場合は、R7年度に追加で不足分の給付が行われる予定となっています。