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所長コラム

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令和8年4月2日 2026年4月1日から変わる項目

 新年度が始まりました。国会審議の遅れがまともに税制改正を直撃していますが、様々な税制改正等が41日より実施されます。

まず、防衛たばこ税の開始です。国税庁は、令和7年度税制改正により、加熱式たばこの紙巻たばこへの本数換算方法が見直され、令和841日施行と案内しています。また、防衛特別法人税が令和841日以後に開始する事業年度から始まります。アメリカ・イラン周辺国の報復の連鎖で、防衛予算が膨らみ、その財源とカウントされています。法人税の税額が0円でも申告が必要であること、法人税・地方法人税の申告書と一体様式であることに注意してください。 

食事の現物支給の非課税枠拡大もあります。国税庁は、令和841日以後に支給する食事について非課税限度額を引き上げる予定と案内しています。もっとも、法改正そのものというより所得税基本通達改正ベースの実務変更です。

自動車関連では、環境性能割の廃止があります。財務省の令和8年度税制改正の概要では、自動車税等の環境性能割は令和8331日をもって廃止とされています。この減税を利用しようと、23月の新車販売台数は大きく減少した模様です。

税制改正ではなく社会保険・年金制度改正ですが、令和84月開始の重要制度改正として在職老齢年金の基準額引上げ(月51万円→65万円)もあります。厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受ける60歳以上の方は、年金基本月額と総報酬月額相当額に応じ、年金額が支給停止(全部または一部)される場合があります。令和83月以前は、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が「51万円」を上回る場合には、年金額の全部または一部について支給停止されていましたが、令和84月以降は、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が「65万円」に見直され、働く高齢者の手取りが増えることになります。

詳しくは、アズールシーズンセミナーでお話いたします。

https://www.azuretax.jp/free5

令和8年3月16日 相続税対策の不動産は今後どうなる?貸付用不動産・小口化商品の評価が見直しへ

 令和8年度税制改正大綱において、資産課税に関する見直しが発表されました。特に注目すべき点は、長年、相続税対策の有効な手段として活用されてきた「貸付用不動産(アパート・マンション等)」および「不動産小口化商品」の評価方法に関する変更です。

 今回の改正は、市場価格と相続税評価額の乖離を利用した過度な節税を抑制し、課税の公平性を図ることを目的としています。これにより、従来想定されていた節税効果が得られなくなる可能性があります。

 不動産が相続対策として活用されてきた主な理由は、「時価(取引価格)」と「相続税評価額」に差があるからです。現金1億円を相続する場合、その評価額はそのまま1億円です。しかし、1億円で賃貸用不動産を購入した場合、土地は路線価(時価の8割程度)、建物は固定資産税評価額(時価の5〜7割程度)を基に計算されます。また、賃貸に供することで、土地は貸家建付地として2割程度減額、建物は貸家として3割減額となります。その結果、相続税評価額を大幅に圧縮することができます。

 この評価の差を利用し、相続直前に借入金で不動産を取得することで相続財産全体を圧縮する手法、いわゆる、「タワマン節税・アパマン節税」が広く行われていました。税務当局は、これまでは例外規定(総則6項)を用いて個別に否認してきましたが、今回、評価方法の見直し方針が税制改正大綱に明記されました。

 もう一つの重要な改正が、「不動産小口化商品(任意組合型など)」の評価方法見直しです。通常の貸付用不動産の場合、取得から相続課税時期までに5年以上経過していれば従来の評価方法に戻りますが、不動産小口化商品は取得した時期にかかわらず、「通常の取引価額(時価)に相当する金額」で評価されます。不動産小口化商品は、都心の一等地のビルなどを一口数百万〜数千万円単位で購入でき、かつ実物不動産と同じ大きな評価減が得られるため、相続税の節税対策として活用されていました。今回の改正により、これらは金融資産に近い性質とみなされ、原則、時価評価されることとなります。この改正は、これから購入するものだけでなく、すでに保有している商品にも影響が及びます。

 令和9年1月1日以降に相続が発生した場合、過去に購入した小口化商品もすべて時価評価となります。これにより、「節税メリットがなくなるため手放したい」と考える投資家が増え、市場での売却価格が下落するリスクも想定されます。保有を継続するか、別の資産に組み替えるかの判断が必要です。

令和8年3月3日 住宅ローン控除の拡充が必要

 令和8年度税制改正大綱では、住宅ローン控除(控除率0.7%)について、適用期限を5年間延長した上で、所要の見直しが行われます。具体的には、既存住宅のうち省エネ性能の高い認定住宅・ZEH水準省エネ住宅に係る借入限度額を引き上げる(3,500万円)とともに、子育て世帯等への上乗せ措置の対象を省エネ基準適合以上の既存住宅にも拡充する(4,500万円)こと、省エネ基準適合以上の既存住宅の控除期間を13 年間に拡充し、省エネ性能の高い住宅の取得を後押しすることなどです。
 しかし、足元の市場動向を考えると、さらなる拡充が必要と言えます。
 まず、2025年の新築分譲マンションの全国平均価格は6,556万円(首都圏では9,182万円)までアップしています。9年連続(㎡単価は13年連続)のアップです。借入限度額(3,500、4,500万円)が小さく見えます。
 次に、住宅ローン控除の控除期間ですが、最長13年です。一方、住宅金融支援機構によれば、返済期間は「30年超~35年以内」が45.8%と最も多いと発表しています。控除期間を更に伸ばす必要があります。
 そして、控除率0.7%についてです。住宅ローン控除は、住宅取得を促進するため住宅ローンに係る支払利息を補助するためとされていますが、三菱UFJ銀行で10年間固定金利が年2.92%~(2026年3月借入の場合)に上がっています。いかにも0.7%ではインパクトが弱すぎます。
 このように、ユーザーから見る住宅市場動向がどんどん厳しくなっていますので、税制改正もさらなる拡充が求められると考えています。
 令和8年度税制改正については、恒例のアズールシーズンセミナーを予定していますので、ぜひご参加ください。

令和8年2月4日 「0%」か「非課税」は大きな違い

 2026年2月8日は、第51回衆議院議員選挙の投票日です。1月23日の衆議院解散から、わずか16日後という戦後最短の日程で、真冬の選挙戦が繰り広げられています。各党は消費税減税を訴えていますが、新聞報道でも食料品の消費税がゼロ(非課税)になると仕入税額控除が消失して飲食店の資金繰りが悪化するということを取上げています。しかし、とても気になります。

 「0%」か「非課税」は大きな違いであり、ここが最大の誤解点です。

 現行制度は軽減税率8%です。この場合、課税売上(8%)から仕入税額控除が可能であり、事業者にとっては預り消費税型です。
食料品を「0%課税」にした場合、課税売上(税率0%)から仕入税額控除が可能であり、輸出免税と同様の構造になります。

 一方、食料品を「非課税」にした場合(社会政策的処理)、非課税売上から仕入税額控除は不可(=控除消失)になり、仕入消費税がコスト化するということで、「0%」か「非課税」かで、事業者の損益は真逆になります。もし、仕入税額控除が消失した場合、食品関連事業者への影響としては、原材料・包装資材・物流費の消費税が全て原価化しますので、利益率の低い業態ほど致命的で、値下げ余地が消失(消費者還元どころではない)します。また、非課税売上が増えると、課税売上割合が低下し、共通仕入の控除制限がかかります。結果、価格転嫁の歪み(表示価格は下がるが、実質的には「隠れ増税」に近い構造)になります。

 この非課税取引については、事業者は売上に関して消費税を受け取ることはありません。非課税取引のために行った仕入れについては、それが課税仕入れであれば消費税を仕入先に支払うことになりますが、この仕入時に支払った消費税は、非課税取引であるが故に仕入税額控除の対象にはならず、したがって、事業者にとってのコストになってしまいます。このような、非課税取引を行うための仕入れにかかる消費税負担のことを「控除対象外消費税」と呼んでいます。公的医療保険でカバーされる医療(社会保険診療)は、消費税法上、非課税取引の一つとして位置付けられています。したがって、社会保険診療を提供する医療機関や薬局においては、控除対象外消費税が発生し、大きな問題になっています。

 ゼロパーセントでも課税売上(非課税ではない)なので、仕入れにかかる消費税は控除できるのでマイナスとなり、医療機関は税務署から払いすぎた消費税を正当に還付してもらうことができることから、繰り返し税制改正要望を行っている団体もあります。「0%」か「非課税」は大きな違いがあることにご留意ください。

令和8年1月19日 1億円の壁と高所得者に対する増税案

 令和8年度税制改正大綱で、いわゆる1億円の壁(高所得層になるほど実効税率が下がる現象)を問題意識の出発点とした、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し」が打ち出されました。顧問先様の中でも、自社株式や不動産を譲渡した年には、引っかかることになりそうですので説明させていただきます。

 令和5年度税制改正で導入された「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」は、金融所得(株式等の譲渡所得・配当所得)や他の所得を合算した総所得が極めて高い所得者に対して、従前の累進税率では税負担率が低くなる逆転現象を是正し、税負担の公平性を確保することを目的に創設されたものです。本見直しは 令和9年分以後の所得税について適用されます。住民税への影響は想定されていません。

計算式は

(基準所得金額 − 1.65億円) × 30% − 基準所得税額=追加負担額

となります。算式中の1.65億円は改正前は3.3億円でしたし、30%も改正前は22.5%でした。

 控除額を引き下げることで、より低い所得水準から負担の適正化措置の適用が始まることになります。

 税率の逆転が起きやすいのは、まず自社株式譲渡です。所得税15%が実質的に30%になります。上場株式の特定口座内での譲渡益・配当金(申告不要として源泉徴収15%で完結しているものを含む)も、本措置の判定上は「対象所得」に含まれます。なお、NISA口座内の譲渡益・配当はそもそも「課税所得」に該当しないので対象外です。

 不動産の長期譲渡所得についても所得税15%ですので、同様に追加課税の対象になります。

 もっとも、高所得とは言え、役員報酬や不動産の賃貸から生じる所得は総合課税で累進税率にて納税していますので、追加課税の有無は 所得の中身次第(15%の所得税対象所得次第)です。

 15%分離課税を形式上は維持したまま、所得を合算し、結果として最低税負担率を30%に引き上げるということです。分離課税を否定せず、実効税率だけを底上げする極めて技巧的な制度設計です。

 このように、複雑な制度ですので、高所得になりそうな方はシミュレーションして、令和8年中に手を打つべきかもしれません。

令和8年1月8日 高市政権下の税制改正

 昨年末、自民党と日本維新の会が取りまとめた税制改正大綱が明らかになりました。

 わが国は、少子高齢化や国際社会の経済競争激化などの構造的課題により、バブ ル崩壊後の長引くデフレに直面し、低成長に苦しんできましたが、着実な回復を実現し、自律的な成長軌道にあと一歩のところまで迫っています。

 雇用を見ると、 足元では人手不足が大きな課題となっていますし、賃金面でも、過去に例を見ない水準の賃上げが広がりつつある中、中小企業では人材確保のための防衛的賃上げまで広がりつつあります。

 しかし、近年の物価上昇は、国民生活に影響を及ぼしており、令和8年度税制改正は、まず、足元の物価高への対応として、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みを創設しました。また、長年にわたって据え置かれてきた税制上の基準額について、網羅的な点検を行い、マイカー通勤に係る通勤手当や従業員への食事の支給に関して所得税が非課税となる限度額など、暮らしに関わる分野を中心に見直しを行い、物価高への対応を行っています。

 また、物価高を超える賃上げの実現に向けて、賃上げ促進税制については、措置期間中ではありますが、臨機応変に対応する考えの下、 防衛的賃上げに苦しむ中小企業に特化した形に見直すことになりました。

 さらに、消費者が支払った消費税相当分が、全て納税されることなく、事業者の手元に一部残る要因となっている「インボイス制度導入に係る経過措置」については、これまでに決定した各種経過措置を含めて最終的に終了することを維持しつつ、 個人・中小事業者の対応状況等も踏まえた更なる配慮を行うために、見直しが行われています。

 今年の改正も、実に幅広に行われることになります。タイムリーな情報提供と改正対応に取り組んでまいります。