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令和8年1月19日 1億円の壁と高所得者に対する増税案

 令和8年度税制改正大綱で、いわゆる1億円の壁(高所得層になるほど実効税率が下がる現象)を問題意識の出発点とした、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し」が打ち出されました。顧問先様の中でも、自社株式や不動産を譲渡した年には、引っかかることになりそうですので説明させていただきます。

 令和5年度税制改正で導入された「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」は、金融所得(株式等の譲渡所得・配当所得)や他の所得を合算した総所得が極めて高い所得者に対して、従前の累進税率では税負担率が低くなる逆転現象を是正し、税負担の公平性を確保することを目的に創設されたものです。本見直しは 令和9年分以後の所得税について適用されます。住民税への影響は想定されていません。

計算式は

(基準所得金額 − 1.65億円) × 30% − 基準所得税額=追加負担額

となります。算式中の1.65億円は改正前は3.3億円でしたし、30%も改正前は22.5%でした。

 控除額を引き下げることで、より低い所得水準から負担の適正化措置の適用が始まることになります。

 税率の逆転が起きやすいのは、まず自社株式譲渡です。所得税15%が実質的に30%になります。上場株式の特定口座内での譲渡益・配当金(申告不要として源泉徴収15%で完結しているものを含む)も、本措置の判定上は「対象所得」に含まれます。なお、NISA口座内の譲渡益・配当はそもそも「課税所得」に該当しないので対象外です。

 不動産の長期譲渡所得についても所得税15%ですので、同様に追加課税の対象になります。

 もっとも、高所得とは言え、役員報酬や不動産の賃貸から生じる所得は総合課税で累進税率にて納税していますので、追加課税の有無は 所得の中身次第(15%の所得税対象所得次第)です。

 15%分離課税を形式上は維持したまま、所得を合算し、結果として最低税負担率を30%に引き上げるということです。分離課税を否定せず、実効税率だけを底上げする極めて技巧的な制度設計です。

 このように、複雑な制度ですので、高所得になりそうな方はシミュレーションして、令和8年中に手を打つべきかもしれません。

令和8年1月8日 高市政権下の税制改正

 昨年末、自民党と日本維新の会が取りまとめた税制改正大綱が明らかになりました。

 わが国は、少子高齢化や国際社会の経済競争激化などの構造的課題により、バブ ル崩壊後の長引くデフレに直面し、低成長に苦しんできましたが、着実な回復を実現し、自律的な成長軌道にあと一歩のところまで迫っています。

 雇用を見ると、 足元では人手不足が大きな課題となっていますし、賃金面でも、過去に例を見ない水準の賃上げが広がりつつある中、中小企業では人材確保のための防衛的賃上げまで広がりつつあります。

 しかし、近年の物価上昇は、国民生活に影響を及ぼしており、令和8年度税制改正は、まず、足元の物価高への対応として、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みを創設しました。また、長年にわたって据え置かれてきた税制上の基準額について、網羅的な点検を行い、マイカー通勤に係る通勤手当や従業員への食事の支給に関して所得税が非課税となる限度額など、暮らしに関わる分野を中心に見直しを行い、物価高への対応を行っています。

 また、物価高を超える賃上げの実現に向けて、賃上げ促進税制については、措置期間中ではありますが、臨機応変に対応する考えの下、 防衛的賃上げに苦しむ中小企業に特化した形に見直すことになりました。

 さらに、消費者が支払った消費税相当分が、全て納税されることなく、事業者の手元に一部残る要因となっている「インボイス制度導入に係る経過措置」については、これまでに決定した各種経過措置を含めて最終的に終了することを維持しつつ、 個人・中小事業者の対応状況等も踏まえた更なる配慮を行うために、見直しが行われています。

 今年の改正も、実に幅広に行われることになります。タイムリーな情報提供と改正対応に取り組んでまいります。