令和7年年金制度改正法に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられます。平均寿命・健康寿命が延びる中で、働き続けることを希望する高齢者の方の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みとすることが、今回の見直しの趣旨です。
■改正のポイント
厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受給する60歳以上の方は、基本月額と総報酬月額相当額に応じ、年金額の全部または一部が支給停止となる場合があります。
令和8年3月以前は、「総報酬月額相当額+老齢厚生年金の基本月額」が「51万円」を上回る場合には、年金額の全部または一部について支給停止されていましたが、令和8年4月以降は、この基準が「65万円」に見直されました。なお、老齢基礎年金は調整の対象外です。
■在職老齢年金による調整後の年金支給月額の計算式
① 基本月額と総報酬月額相当額との合計が支給停止調整額以下の場合
→ 年金は全額支給
② 基本月額と総報酬月額相当額との合計が支給停止調整額を超える場合
→ 年金支給額 = 基本月額 −(基本月額+総報酬月額相当額−基準額)÷2
【基準額】
・改正前:51万円
・改正後:65万円
今回の改正により、一定以上の収入があっても年金が減額されにくくなり、働きながら年金を受給しやすい環境が整備されます。
参考:厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.files/zairo.pdf
令和8年度税制改正大綱により、消費税のインボイス制度に係る経過措置について、小規模事業者に係る税額控除割合や免税事業者からの仕入税額控除について見直しが行われました。
なお、当該改正案については、国会審議の過程で内容が変更される可能性があります。
(1) 適格請求書発行事業者となる小規模個人事業者に係る税額控除に関する経過措置
免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者を対象とした「2割特例(納付額を売上税額の2割とする軽減措置)」は令和8年9月30日の属する課税期間をもって終了予定でした。しかし個人事業者については、令和9年分および令和10年分の2年間に限り、「3割特例(売上税額の3割納付)」が設けられることになりました。
しかし、これまでより税負担が増えることには変わりないため、2割特例を適用していた個人事業者について、業種や取引状況によっては、簡易課税や原則課税の方が有利となる場合もあり、慎重に検討する必要があります。
また、前述のとおり、今回の改正は個人事業者に限定したものであり、法人については、予定通り、令和8年9月30日の属する課税期間をもって2割特例は終了し、その後は原則課税か簡易課税により消費税の申告を行うこととなります。
(2) 適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置
免税事業者からの仕入れに対する税額控除は、令和8年10月から「50%」へと下がり、令和11年10月から「0%」(控除不可)となる予定でしたが、今回の改正で、令和8年10月から「70%」、令和10年10月から「50%」、令和12年10月から「30%」、そして令和13年10月から「0%」(控除不可)となり、控除割合の引き下げ幅が緩和され、最終的な適用期限も2年延長されました。
ただし、令和8年10月以降に開始する課税期間からは、1つの免税事業者から行う課税仕入れの額の合計が、その年又はその事業年度で「1億円」(現行10億円)を超える場合、その超えた部分の課税仕入れについては、この経過措置は適用されません。改正後は上限額が大幅に引き下げられるため、注意が必要です。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_04.htm
令和7年度税制改正により、「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」の提出範囲が見直されました。これまで同票の税務署および市町村長への提出は、退職手当等の受給者が法人の役員である場合に限られていましたが、令和8年1月1日以後に支払う退職手当等からは、役員・従業員を問わず、すべての居住者について提出が義務化されます。これにより、従業員に支給する退職手当等についても、受給者交付用に加え、税務署提出用および市町村長提出用の作成が必要となります。
ただし、同票のうち地方税に係る「特別徴収票」については、令和7年12月26日公布の「地方税法施行規則の一部を改正する省令」により、令和8年1月1日以降「当分の間」、市町村長への提出が不要とされました。これは、eLTAXにおける提出環境が十分に整っていないことを理由とする暫定的な措置です。なお、任意で提出した場合でも問題はありません。
本措置はあくまで退職手当等の特別徴収票に係る市町村長への“提出”が不要となるものであるため、受給者交付用及び税務署提出用においては、特別徴収税額等を含む必要事項を記載する必要があります。
No.7421 「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hotei/7421.htm
令和8年(2026年)から導入される「二重扶養」防止の新システムは、これまで自治体間で共有されていなかった扶養情報をデジタルで一元的に照会可能にする仕組みです。
このシステムの主な仕組みと特徴は以下の通りです。
1. 自治体中間サーバーへの情報登録
これまで、別々の市区町村に住む親族(例:離れて暮らす兄と妹)が、同じ親をそれぞれの扶養親族として重複して申告した場合、自治体同士が情報を共有する手段がなく、この「二重扶養」を見抜くことが困難でした。新システムでは、各自治体が「誰が誰を扶養しているか」という情報を自治体中間サーバーに登録し、共有します。
2. 「機関別符号」を用いた自動照会
情報の照会には、マイナンバーを直接使わずに個人を特定できる「機関別符号」という暗号化された符号が用いられます。
• 特定の自治体を指定せずに照会可能:これまでは相手の自治体を特定して個別に問い合わせる必要がありましたが、新システムでは情報提供ネットワークシステムを介することで、全国の自治体を対象に他市町村での扶養状況を一括してチェックできるようになります。
• 自動的な判明:扶養の申告を受けた自治体がシステム上で照会をかけると、他市町村で既にその親族が扶養対象となっている事実が即座に判明します。
3. 国税(所得税)への情報連携
自治体でのチェックによって「二重扶養」が判明し、住民税の是正が行われた場合、その情報は税務署にも共有されます。
これにより、年末調整や確定申告における所得税の誤りについても、後日自動的に「扶養是正」として修正を求められる可能性が非常に高まります。
4. 給付金事務への活用
このシステムは税務調査だけでなく、住民税非課税世帯を対象とした給付金の迅速な支給にも活用されます。市外の家族に扶養されているかどうかがシステムで即時に確認できるため、これまで必要だった「確認書」の送付や返送といった市民の手間が省けるようになります。
参考:総務省「令和5年度個人住民税検討会報告書(令和6年3月総務省自治税務局市町村税課)」