令和4年度税制改正により、給与所得者に退職所得(分離課税対象)を受給する一定の“同一生計配偶者”や“扶養親族”がいる場合、扶養控除等申告書などにその配偶者等の氏名等を明記する措置が講じられます。これにより令和5年1月1日以後に支払われる給与等において所得税と個人住民税で合計所得金額の範囲が異なることから生じていた、住民税での配偶者控除や扶養控除などの適用漏れに対応します。
これまでは合計所得金額の範囲が所得税と住民税で異なる※ことから、同一生計配偶者等が退職所得(分離課税対象)を受給することで、合計所得金額要件の充足に差異が生じていました。
※所得税は、分離課税対象の退職所得を含む。
住民税は、分離課税対象の退職所得を含まない。
源泉徴収(特別徴収)で納付が完了する給与所得者が配偶者控除や扶養控除等の適用を受けるには、通常、年末調整で「給与所得者の配偶者控除等申告書」や「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出すればよく、その後、勤務先が税務署に「給与所得の源泉徴収票」を、市町村には「給与支払報告書」を提出することで、給与所得者は、住民税の確定申告書を提出することなく、所得税、住民税ともに適用を受けることができました。
ただ、前述のとおり、所得税と住民税で合計所得金額の範囲が異なることから、住民税で同一生計配偶者等の合計所得金額要件を満たしていたとしても、年末調整では本来受けられるはずの控除が受けられなくなるケースがあります。
例えば、同一生計配偶者が退職所得(分離課税対象)の受給により、所得税で合計所得金額48万円以下の要件を満たさないこととなると、現行では、“控除対象配偶者なし”の状態で「給与支払報告書」が市町村に提出されてしまうため、控除の適用を受けるためには、住民税の確定申告書の提出が必要となります。
改正後は、令和5年1月1日以後に支払われる給与等に係る年末調整において、給与所得者が分離課税対象の退職所得を受給する一定の同一生計配偶者と扶養親族の氏名、住所、住民税における合計所得金額の見積額などを「扶養控除等申告書」に設けられる所定の欄(場所や体裁は未定)に記載し、勤務先に提出をし、勤務先は「扶養控除等申告書」に記載された記載対象配偶者等の氏名、配偶者又は扶養親族である旨、住所などを、「給与支払報告書」の摘要欄に氏名の前に「(退)」を付けて記載し、市町村に提出することで、住民税で控除の適用を受けられるようになります。
また、年末調整ではなく、所得税の確定申告で控除を受ける場合も同様の改正がなされており、記載対象配偶者等の氏名等を、所得税の確定申告書の「住民税に関する事項」の欄に記載することとなります。なお、確定申告書への記載については、令和4年分以後の所得税の確定申告(令和5年以後提出)から適用される予定です。
税務行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のため、自己情報のオンライン確認ができる「申告書等情報取得サービス」が開始されました。税務署に提出した申告書等の情報については、個人情報の保護に関する法律の規定に基づく開示請求によることなく、一定の方法により、表示・印刷・閲覧することができます。
新たな「申告書等情報取得サービス」の利用申請に当たって、利用者はe-Taxにログインし、申請画面上からマイナンバーカードによる電子署名を行う必要があります。
所得税の確定申告書等については、書面又はe-Taxにより提出している場合でも、e-Taxソフト(WEB版・SP版)にログインすることで、PDFファイルを取得できる「申告書等情報取得サービス」が利用できます(手数料はかかりません。)。
「申告書等情報取得サービス」の対象となるのは、
・所得税及び復興特別所得税確定(修正)申告書
・青色申告決算書
・収支内訳書 のうち直近3年分(令和2年分以降)が対象となります。
注意点として、申請からPDFファイルの取得までには数日かかること、PDFファイルのダウンロード可能期間はメッセージの格納から180日以内であること、代理人や相続人は利用できないこと、が挙げられています。
税務署では、納税者が過去の申告事績等を確認して、じ後の適正な申告書等の作成を行う場合に、「内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現、酒類業の健全な発達」という行政目的にかなう範囲で、提出済みの申告書等(各種申請書、届出書、請求書を含む)を閲覧に供するサービスを実施しています。
詳細は下記をご参照下さい。
今回は令和4年度税制改正の中から、固定資産税の負担調整措置についてご紹介いたします。
令和3年度は、3年に一度の固定資産税評価額の評価替えがありましたが、新型コロナウイルス感染拡大を受け、地価が上昇しているすべての土地の課税標準額は令和2年度の課税標準額に据え置く(固定資産税が前年と同額になる)という措置がとられました。
令和4年度はというと、商業地等に係る課税標準額の上昇幅を、評価額の2.5%(現行:5%)とする措置がとられました。
固定資産税には、地価が急激に上昇して税負担が重くなり過ぎないようにする「負担調整措置」があります。具体的には、地価上昇で負担増(負担水準が20~60%未満)となる場合、税額のベースとなる課税標準額を「前年度課税標準額+土地評価額の5%」とする負担調整措置が講じられます。令和4年度税制改正では、この「土地評価額の5%」の部分が、令和4年度に限り「2.5%」となるため本来の負担額よりも少なくなります。
固定資産税の負担調整措置についての詳細は下記URLをご参照下さい。
令和4年度 国土交通省税制改正概要(8ページ)
ロシアによるウクライナ侵攻に、ウクライナだけでなく世界中が緊迫した状態となっています。そんな中、ウクライナを支援しようと、在日ウクライナ大使館には3月7日時点で約15万人から40億円近くの寄附が寄せられたとのことです。
その他、在日大使館や国連機関、民間企業などが寄附の専用口座を設ける動きが広がっており、大阪府泉佐野市では、ふるさと納税の仕組みを活用した寄附を呼び掛けています。こうした寄附の選択肢が広がるなか、ウクライナへの寄附で寄附金の控除が受けられるかは、寄附した団体先によって異なります。
寄附金の控除対象は、個人の寄附が「特定寄附金」に該当する場合に限られており、具体的には、国や地方公共団体、財務大臣の指定を受けた公益社団法人等、認定NPO法人などが特定寄附の範囲とされ、寄附先がいずれに該当するのかを確認する必要があります。
例えば、ウクライナへの寄附団体の一つである日本赤十字社の場合、同団体が特定公益増進法人に該当するため、控除の対象となりますが、前述したウクライナ大使館への寄附の場合、所得税法で規定する国に諸外国は含まれず、最終的な寄附先が国外になることから、控除の対象外となります。
また、寄附による控除額については、寄附した団体が「認定NPO法人等」、「公益社団法人等」などの場合、寄附金控除として所得控除の適用を受けるか、寄附金特別控除として税額控除の適用を受けるか、どちらか有利な方を選ぶことができます。所得控除の場合は「寄附金の合計額-2,000円」となり、税額控除の場合は「(寄附金の合計額-2,000円)×40%」となります。
※なお、所得控除は所得金額の40%相当額が上限、税額控除は所得金額の25%相当額が上限です。
特定寄附金に該当するその他の団体としては、ウクライナの子どもたちへの支援を行う「日本ユニセフ協会」や、ウクライナから避難した難民の方々の支援を行う「国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)」などが挙げられます。
寄附金控除についての詳細は国税庁HPをご参照下さい。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_3.htm
国税庁は2月3日、オミクロン株による感染拡大等に伴い、令和3年分の申告所得税等について、「令和4年4月15日」までの間、簡易な方法による申告・納付期限の延長を認めることを公表しました。同日には、各FAQも公表・更新されました。
令和元年分・令和2年分の申告所得税等については、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言の発令期間と確定申告期間が重なること等から、申告と納付期限が全国一律で1か月延長されました。
それに対し、令和3年分の申告所得税等の申告期限等については、一律延長の対応は執られず、申告・納付期限は、原則通り「令和4年3月15日(個人事業者の消費税は令和4年3月31日)」となります。
しかし、オミクロン株の拡大による感染者数が急増していることから、「令和4年4月15日」までの間については、表題のとおり、簡易な方法による申告・納付期限の延長が認められることとなりました。
簡易な方法とは、新型コロナの影響により期限までに申告・納付等が困難な場合に、申告書の余白に『新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請』といった所定の文言を記載すれば、期限延長が認められるものです(e-Taxの場合も同様)。具体的な延長申請の理由の記載は不要となり、「災害による申告、納付等の期限延長申請書(延長申請書)」の作成・提出も不要となります。
加えて申告所得税等の他、令和4年1月以降に法定申告期限等を迎える、法人税や相続税などその他の国税、所得税の更正の請求や青色申告承認申請などの手続きも対象となります。
なお、令和3年12月末以前に法定申告期限等を迎えた手続については、延長申請書の作成・提出が必要となります。同様に、4月16日以降も新型コロナの影響が続き、申告等ができなかった場合には延長申請書の作成・提出が必要となります。
今回の簡易な方法による申告・納期限の延長については、令和元年分・令和2年分の時と同様に、利子税は免除され、延滞税も課せられません。
詳細につきましては、以下の国税庁HPをご参照下さい。
「新型コロナウイルス感染症の影響により申告期限までの申告等が困難な方へ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/pdf/0022001-187_04.pdf
「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と・・・に関するFAQ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/index.htm
令和3年分の確定申告からふるさと納税(寄附金控除)の申告手続が簡素化されます。
1 制度の概要
寄附金控除の適用を受けるためには、確定申告書に特定寄附金の受領者が発行する寄附ごとの「寄附金の受領書」の添付が必要とされていますが、令和3年分の確定申告から、特定寄附金の受領者が地方団体であるとき(ふるさと納税であるとき)は、寄附ごとの「寄附金の受領書」に代えて、特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」を添付することができることとされました。
2 特定事業者とは
「寄附金控除に関する証明書」を発行することのできる特定事業者とは、地方公共団体と特定寄附金の仲介に関する契約を締結している者であって、特定寄附金が支出された事実を適正かつ確実に管理することができると認められるものとして国税庁長官が指定した者とされています。
対象となる特定事業者は、令和3年11月12日時点で以下の14社です。
[ふるなび、さとふる、楽天ふるさと納税、ふるさとチョイス、ふるさとパレット、ふるさとプレミアム、ふるさとぷらす、セゾンのふるさと納税、ANAのふるさと納税、ふるさと本舗、三越伊勢丹ふるさと納税、JALふるさと納税、au PAY ふるさと納税、ふるラボ]
3 確定申告の申告方法
寄附金控除に関する証明書の提供を受けた寄附者は、次の方法により確定申告を行うことができます。
・特定事業者のポータルサイトからダウンロードした証明書データをe-Taxを活用して確定申告書に添付して送信する方法
・特定事業者のポータルサイトからダウンロードした証明書データを国税庁が提供するQRコード付証明書等作成システムで読み込み、これをプリントアウトした書類を確定申告書に添付して申告する方法
・郵送で交付を受けた証明書を確定申告書に添付して申告する方法
※確定申告が不要な給与所得者等が利用できる「ワンストップ特例制度」には変更はありません。
詳細については国税庁ホームページをご参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kakutei/koujyo/kifukin.htm
税務手続きの電子化は、大法人の法人税電子申告に始まり、法人税にかかる申告データを円滑に提出させる環境整備を目的として推進されています。法定調書の電子提出義務は平成30年度の税制改正により「法定調書ごとに1,000枚以上ある場合」から「法定調書ごとに100枚以上ある場合(令和3年分より)」に引き下げられることになりました。
⑴ 法定調書とは
「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」及び「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により税務署に提出が義務づけられている資料をいいます。
現在、60種類の法定調書があります。
⑵ 法定調書の例
法定調書には、様々な種類がありますが、多くの場合下記の6種類の法定調書が利用されます。
1. 給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)
2. 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
3. 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(税理士報酬など)
4. 不動産の使用料等の支払調書
5. 不動産等の譲受けの対価の支払調書
6. 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
原則毎年1月末日までに所轄税務署長に提出します。
⑶ 提出方法について
法定調書の提出はe-tax、CD・DVDなどの光ディスク等、クラウド等、書面の方法から選択することができます。
ただし一定の要件の下、書面を除くe-tax、光ディスク等、クラウド等による電子による提出が義務になる場合があります。
⑷ 電子による提出義務基準について
法定調書の種類ごとに、前々年の提出すべきであった法定調書の提出枚数が「100枚以上」である法定調書については、e-tax、光ディスク等又はクラウド等により法定調書を提出する義務があります。
義務の有無については法定調書の種類ごとに判断します。
例えば、令和2年1月に提出した「給与所得の源泉徴収票」の枚数が「100枚以上」であった場合には、令和4年1月に提出する「給与所得の源泉徴収票」はe-Tax又は光ディスク等又はクラウド等により提出する必要があります。
詳細につきましては、国税庁HPをご参照下さい。
・e-tax等による法定調書の提出が義務化されています(チラシ)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/hikari_gimu.pdf
・令和3年分 法定調書の作成と提出方法(動画)