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消費税インボイス実務ポイント

令和5年10月1日から導入されるインボイス制度によって、必要を迫られるであろう実務対応のポイントをまとめた特集ページです。

1. 売手負担の振込手数料(令和4年8月16日時点)

 売掛金が入金されるときに一定金額、振込手数料のようなものが差し引かれて振り込まれてくることがあります。令和5年10月開始の消費税インボイス制度後は、これを課税仕入れとして仕入税額控除するのであれば、「インボイスが必要になるのか?」という質問が多く寄せられています。
 例えば、皆さんが50,000円請求した場合、慣行として振込手数料880円が差し引かれ、49,120円が口座に入金されることがあります。この場合、880円を売上値引とするか、支払手数料(または雑費)とするかしないと、880円が残ってしまうので、経理処理が先に進めません。
 以前の商習慣では振込手数料が引かれて当たり前ということが結構多かったですが、最近は、「振込手数料は御社負担でお支払いください」と書いてある請求書も見られるようになりました。また、支払通知書に、「手数料○○円引きます」と書いて差し引いた振込額が書いてあるところもあります。これらの場合には売手にとってのインボイス問題は起きませんが、そうでない場合には、80円の仕入税額控除が受けられません。
 「支払手数料」(または雑費)とするパターン1では、「振込手数料を立替払いしてもらった」と認識します。しかし、買手から立替払いの事実を証する何か書類を出してもらうことになりますので、現実的にはかなり難しいと思います。
 「売上値引」とするパターン2では、「返還インボイス」での対応になります。返還インボイスというのは売上げに係る対価の返還や値引きを行った場合に交付する規定になっています。継続的に毎月やり取りしているのであれば、翌月の書類に何か反映するような対応をすればいいわけです。
 さらに、パターン3は「仕入税額控除しない」ということも考えられます。費用対効果を考えたら、年間振込手数料のうちの消費税は僅かなので、それについて取引先に立替インボイスをよこせとか、あるいは値引したと書くとかということではなく、仕入税額控除しない、という選択もできます。
 現行制度では、支払対価の額が3万円未満の課税仕入れは、帳簿のみの保存で仕入税額控除を適用することができます。インボイス制度においても、少額の取引(ETC)や送金手数料について「インボイスの保存なしに仕入税額控除を認める」という改正が期待されていましたが、検討されていないようです。領収書を3万円未満に分割して、要件をクリアしようとする実務になってしまいかねないので、やむをえません。

 なお、この難題は、簡易課税の事業者さんの場合で、今まで「支払手数料」(または雑費)処理している場合には関係ありませんが、「売上値引」処理している場合には上記パターン2の対応が必要になりますのでご注意ください。

2. インボイスの登録番号は取引の都度、確認しなくてはいけないのか(令和4年9月1日時点)

 取引件数が膨大になる場合のインボイスに記載された登録番号の効率的な確認方法について気にされている方も多いと思います。
 登録番号を確認するのは2つの場面が想定されます。1つは「手元にあるインボイスを確認しなくてはならない場面(取引後の確認)」。もう1つは「取引前に相手が登録番号をもっているか否かの確認(取引前の確認)」です。

 まず取引後の確認についてですが、一度取引があった人について、頻繁に登録番号の確認をする必要はありません。例えば支払先の年間売上高が1,000万円を超える事業者である場合や、継続的にこの取引先に年間1,000万円以上支払っているという関係の場合は登録番号の確認はほとんど必要ないと思われます。
 また1回の取引金額の重みづけも重要です。110万円と110円のインボイスでは重みが異なってきますし、同じ110万円でも「継続的に取引している相手」なのか「単発で取引した相手」なのかでも違うことになります。確認の重要度に応じて、登録していない人が登録していると誤認されるような書類(偽インボイス)の交付をしてくるリスクに関しても重みづけをして、支払先が膨大にいる場合には、データ処理とかシステムの中で管理していくことが現実的かつ、重要になります。

 次に取引前の確認についてですが、手元に請求書が回ってきた段階ではなく、契約の段階で登録番号が取得されているかの確認をすることが重要です。またこの場合でも全ての取引先について確認しないといけないわけではなく、相手が個人事業者とか、中小より小さい零細企業、あるいは税理士が関与していない個人であればより確認の重要性は高いと言えます。すでに登録が始まっているので、仕入先に登録の確認をされている事業者の方もいらっしゃることでしょう。売り手の立場としては取引先に安心してもらうために「登録しました」という案内状を出すのも一つかと思います。

3. 少額取引の仕入税額控除の要件について(令和4年9月16日時点)

 現行法においては、課税仕入れ等に係る消費税額を控除するには、その事実を記載し、区分経理に対応した帳簿および事実を証する区分記載請求書等の両方を保存する必要があります。
 ただし、特例的な取り扱いとして、税込みの支払額が30,000円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみでよいこととされています。
 しかし、令和5年10月にインボイス制度が導入されることにより、現行の特例的な取り扱いは廃止され、下記の取引のみを対象として、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

① 公共交通機関特例の対象として適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(1に該当するものを除きます。)

③ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得

⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入

⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

⑧ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

4. 従業員に支給する出張旅費等の帳簿記載について(令和4年10月3日時点)

 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)であれば、消費税インボイス実務ポイント(3)で説明したとおり適格請求書(インボイス)の保存でなく、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けることができます。
 これは従業員のほとんどは事業者ではない、つまり適格請求書発行事業者ではないので仕入税額控除ができないのではないかということになりますが、法令で手当し帳簿保存のみで仕入税額控除を認めているからです。

 例えば、旅費精算システムの入力データやその入力元となる旅費精算書といったものに遡って出張旅費であることが確認できれば、仕訳帳や総勘定元帳に「出張旅費」と書いていなくても記載があるものとして取り扱われるのですか?という質問をいただきます。

 消費税法上では「帳簿」と一口に言いますが、これについては課税仕入れの相手方の氏名又は名称や取引の日付など、一定の事項が書かれているものであると法律上規定しています。そのため、総勘定元帳に限らず、いわゆる旅費精算システムのようなものが補助簿としての役割を有しているのであれば、仕訳帳や総勘定元帳に記載がなくても取り扱われます。
 ただし、自前のシステムということであれば「※」などの印をつけておいて「『※』は旅費の対象です」と、どこかにわかるようにしておくことが重要だと思います。

 旅費精算システムが補助簿としての機能を有していれば、必ずしも総勘定元帳や仕訳帳に旅費である旨の記載がなくとも、全体として帳簿の記載事項を満たしていると考えられます。
 ただし、総勘定元帳と旅費精算システム等そのものが連動していない場合やシステムとは連動しているが旅費以外の経費が混在しており区分できない場合であって、個別の取引等が旅費に該当するかどうか識別できない場合などには留意が必要です。

5. インボイス制度開始後における仕入税額控除の経過措置について(令和4年10月17日時点)

インボイス制度においては、インボイス発行事業者以外の者である免税事業者などからの課税仕入れについては、原則として、仕入税額控除ができなくなります。

ただし、制度開始直後より免税事業者からの仕入税額控除がゼロになるというわけではなく、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除ができる経過措置が設けられています。この経過措置を受けるに当たっては、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等を保存し、帳簿にこの経過措置を受ける旨を記載していれば、下記の期間に応じて一定割合の仕入税額控除が認められます。

 (1)令和5101日から令和8930日まで ・・・ 仕入税額相当額の80%

 (2)令和8101日から令和11930日まで ・・・ 仕入税額相当額の50%

 そして、この経過措置を適用する場合に仕入税額とみなす金額の具体的な計算方法(上記(1)80%控除の場合)は次のとおりとなります。

➀仕入税額について「積上げ計算」を適用する場合

本経過措置の適用を受ける課税仕入れの都度、その課税仕入れに係る支払対価の額に

110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の80を乗じて算出します(その金額に1円未満の端数が発生したときは、その端数を切り捨て又は四捨五入します。)。

この算出する際の「課税仕入れの都度」については、課税仕入れを行ったごとに算出する場合のほか、受領した請求書や納品書を単位として算出する場合が考えられますが、継続的に買手の支払基準といった合理的な基準による単位により算出する場合も認められるようです。

 なお、期末に対象となった仕入税額を合計した金額で計算を行うことはできないようですが、本経過措置の適用を受ける課税仕入れを区分して管理し、課税期間の中途や期末において、当該区分した課税仕入れごとに上記計算を行うこととしても差し支えないようです。

➁仕入税額について「割戻し計算」を適用する場合

 課税期間中に行った本経過措置の適用を受ける課税仕入れに係る支払対価の額の合計額に110分の7.8(軽減税率の対象となる場合は108分の6.24)を乗じて算出した金額に100分の80を乗じて算出します。

 制度開始後の実務や運用面を考えた場合、問題となるのはインボイス発行事業者以外の者である免税事業者などから課税仕入れを行ったときに、この本経過措置をどうやって会計システム上で把握し、集計していくかという点ではないかと考えます。特に仕入先等が多い場合は非常に悩ましいと思います。まずは自社で利用されている会計システムについて、軽微な改修で済むのか、それとも大規模な改修を必要とするのかを十分検討していただき制度開始までに間に合うよう余裕を持って準備していただければと思います。

6. 立替金取引と仕入税額控除について(令和4年11月1日時点)

インボイス制度においては、事業者が仕入税額控除の適用を受けるには一定の必要事項が記載されたインボイスの保存が必要になります。

課税仕入について、立替払が行われる場合、課税資産の譲渡等を行う者が立替払を行う者宛てに交付された適格請求書を、立替えを受ける者(課税仕入れを行う者)が立替払を行う者からそのまま受領したとしても、これをもって課税資産の譲渡等を行う者から立替を受ける者(課税仕入を行う者)に交付された適格請求書とすることができません。

この場合、立替えを受ける者(課税仕入れを行う者)は、立替払を行う者から立替金精算書等の交付を受けることにより、その課税資産の譲渡等が立替えを受ける者(課税仕入れを行う者)のものであることが明らかにされている場合には、その適格請求書及び立替金精算書等の書類の保存をもって、課税仕入れに係る請求書等の保存要件を満たすこととなります(立替払を行う者が適格請求書発行事業者かどうかは問いません)。

なお、立替払いの内容が、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入に該当することが確認できた場合、立替えを受ける者(課税仕入れを行う者)は、一定の事項を記載した帳簿を保存することにより仕入税額控除を行うことができます。この場合、適格請求書及び立替金精算書等の保存は不要となります。

また、立替えを受ける者(課税仕入を行う者)が複数の事業者となる場合、原則として、立替払を行う者は課税資産の譲渡等を行う者から受領した適格請求書をコピーし、経費の支払先である課税資産の譲渡等を行う者からの課税仕入れがそれぞれの立替えを受ける者(課税仕入れを行う者)のものであることを明らかにするために、立替払を行う者が作成した立替金精算書等を添えるなどし、それぞれの立替えを受ける者(課税仕入れを行う者)に交付する必要があります。

しかしながら、立替えを受ける者(課税仕入れを行う者)に交付する適格請求書のコピーが大量になるなどの事情により、立替払を行う者がコピーを交付することが困難なときは、立替払を行う者が交付を受けた適格請求書を保存し、立替えを受ける者(課税仕入れを行う者)に立替金精算書等を交付し、保存することで、仕入税額控除を行うことができます。

 ただし、この場合、立替払を行う者は、その立替金が仕入税額控除可能なものか(すなわち、適格請求書発行事業者からの仕入れか、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れか)を明らかにし、また、適用税率ごとに区分するなど、立替えを受ける者(課税仕入を行う者)が仕入税額控除を受けるに当たっての必要な事項を立替金精算書等に記載しなければなりません。

 なお、仕入税額控除の要件として保存が必要な帳簿には、課税仕入れの相手方の氏名又は名称の記載が必要となりますし、適格請求書のコピーを交付しないため、その課税仕入れが適格請求書発行事業者から受けたものか否かを確認できなくなるため、立替払を行う者と立替えを受ける者(課税仕入を行う者)の間で、課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号を確認できるようにしておく必要があります。

 ただし、これらの事項について、別途、書面等で通知する場合のほか、継続的な取引に係る契約書等で、別途明らかにされているなどの場合には、立替金精算書等において明らかにしていなくても差し支えありません。

      

(出典:国税庁 「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」 問64)

7. 消費税インボイス制度下における口座振替等による支払いの取扱い(令和4年11月16日時点)

家賃の支払いなどの継続的な取引について、賃貸借契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引についても、原則として適格請求書の保存が必要とされています。

この場合については、次のような対応が考えられます。

<一定期間分の取引の適格請求書をまとめて交付を受ける場合>

 インボイスは、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方(貸主)から一定期間の賃貸料についてのインボイスの交付を受け、それを保存することによる対応も可能です。

 <契約書に適格請求書の必要事項の一部を記載し、事実関係書類を併せて保存する場合>

適格請求書として必要な記載事項は下記のとおりですが、この記載事項は一つの書類だけで全てが記載されている必要はないとされています。

1)適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

2)取引年月日

3)取引の内容

4)税率ごとの合計金額及び適用税率

5)税率ごとに区分した消費税額

6)書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

  複数の書類で記載事項を満たせばそれらの書類全体でインボイスの記載事項を満たすことになりますので、契約書にインボイスとして必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。

家賃支払の場合には、適格請求書の記載事項の一部((2)以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(取引年月日の事実を示すもの)を併せて保存することで、適格請求書の保存要件を満たすこととなります。

 また、口座振込により家賃を支払う場合についても、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、適格請求書の保存要件を満たすこととなります。

 なお、令和5930日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足していた場合でも、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えないとされています。

  取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引について、ご注意いただきたいことは、取引の中途で取引の相手方が適格請求書発行事業者でなくなる場合です。

相手方から適格請求書発行事業者でなくなる旨の連絡がない場合には、買い手側はその事実を把握することは困難となります。仮に、相手方が適格請求書発行事業者でなくなった場合でその旨の連絡がないまま、代金の支払いを行っていた場合、その支払いについては適格請求書発行事業者以外の者に対する支払いであるため、原則として、仕入税額控除を行うことはできません。

そのため、相手方が適格請求書発行事業者か否かについては、「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認することができます。

8. 買い手が作成した仕入明細書等による仕入税額控除(令和4年12月1日時点)

令和5101日以後に仕入税額控除を受ける場合には、適格請求書等の保存が必要となります。適格請求書等には、売り手が作成する請求書等だけでなく、買い手が作成する仕入明細書等も含まれるため、この仕入明細書等を保存することによって仕入税額控除の適用を受けることができます。

  現行制度においても、買い手が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、相手方の確認を受けたものについては、仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等に該当します。

  インボイス制度導入後においても仕入明細書等による仕入税額控除は可能ですが、課税仕入れの相手方において課税資産の譲渡等に該当するものであり、次の事項が記載されている必要があります。

1)仕入明細書の作成者の氏名又は名称

2)課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号

3)課税仕入れを行った年月日

4)課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)

5)税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率

6)税率ごとに区分した消費税額等

したがってインボイス制度下では、適格請求書発行事業者以外(免税事業者)からの仕入れについては、仕入明細書等に課税仕入れの相手方の登録番号が記載できず、適格請求書の要件を満たさないこととなるため注意が必要です。

  また仕入明細書等については、相手方の確認を受けたものに限られますが、この確認を受ける方法としては次のようなものがあります。

     仕入明細書等の記載内容を、通信回線等を通じて相手方の端末機に出力し、確認の通信を受けた上で、自己の端末機から出力したもの

     仕入明細書等に記載すべき事項に係る電磁的記録につきインターネットや電子メールなどを通じて課税仕入れの相手方へ提供し、相手方から確認の通知等を受けたもの

     仕入明細書等の写しを相手方に交付し、又は仕入明細書等の記載内容に係る電磁的記録を相手方に提供した後、一定期間内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする基本契約等を締結した場合におけるその一定期間を経たもの

 ③に記載があるように明示的に確認した旨の連絡を受ける必要はないため、仕入明細書等に「送付後一定期間内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする」旨の文言を記載したり、別途通知文書等を添付したりして相手方に送付して了承を得れば、相手方の確認を受けたものとなります。

9. 適格請求書の交付義務が免除される自動販売機特例とは?(令和4年12月19日時点)

適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除される取引の1つに、「3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等」いわゆる「自動販売機特例」があります。この自動販売機特例に該当するのは、具体的には以下のような取引です。

・自動販売機による飲食料品の販売

・コインロッカーやコインランドリー等によるサービス

・金融機関のATMによる入出金、振込サービス(手数料を対価とする機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するもの)

 これらの取引は、代金の受領と資産の譲渡等が機械装置によって自動で行われ、その機械装置のみで、代金の受領と資産の譲渡等が完結する取引です。

 その一方、以下のような取引は自動販売機特例の対象外となります。

・小売店内に設置されたセルフレジを通じた販売

 →単に機械で精算が行われているだけであるため

・コインパーキングや自動券売機

 →代金の受領と券類の発行はその機械装置で行われるが、資産の譲渡等は別途行われるため

・ネットバンキング

→機械装置で資産の譲渡等が行われないため

自動販売機特例に該当する取引については、一定の事項(自動販売機による仕入である旨等)を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けることができますが、コインランドリーとコインパーキングのように、一見同じような取引と考えがちな取引であっても特例の対象外となる場合があるので注意が必要です。

10. 経過措置の適用により免税事業者がインボイス登録をする場合(令和5年2月2日時点)

インボイス制度においては、仕入税額控除の要件として、原則、インボイス発行事業者から交付を受けたインボイスの保存が必要となります。

インボイスを交付できるのは、インボイス発行事業者に限られ、インボイス発行事業者となるためには、登録申請手続きを行い、登録を受ける必要があります。

原則として、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、消費税課税事業者選択届出書(以下「選択届出書」という)を提出しなければならないですが、経過措置の適用によりインボイスの登録申請書の提出のみで登録手続きが完了するため選択届出書の提出が不要となります。通常は選択届出書を提出して課税事業者となった場合には、2年間は免税事業者となることができません(いわゆる2年縛り)。また、選択届出書を提出して課税事業者となった課税期間から2年以内に調整対象固定資産(税抜100万円以上の棚卸以外の資産)を取得した場合には、その取得日の属する課税期間から3年間は免税事業者となることができません(いわゆる3年縛り)。

しかし、経過措置の適用をした場合には適格請求書発行事業者の登録日がいつかにより2年縛り及び3年縛りの適用対象が変わります。

     経過措置を適用して令和5101日の属する課税期間に登録する場合

2年縛り及び3年縛りの対象とならない。

     経過措置を適用して令和5101日の属する課税期間以外に登録する場合

2年縛りのみ対象となる。

また、経過措置の適用により令和5101日以後に登録申請書を提出し登録を受けようとする免税事業者は、登録希望日から1月前の日までに提出する必要があります。(令和5年税制改正大綱により1月前の日→15日前の日に変更される予定です。)

取消しについては、翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、当該翌課税期間の初日から30日前の日までに届出書を提出する必要があります。(令和5年度税制改正大綱により30日前の日→15日前の日に変更される予定です。)

そのため、いつ登録するかにより免税事業者に戻ることができるタイミングが変わるため免税事業者に戻る可能性も考慮して登録を検討することが必要です。

11. インボイス制度の負担軽減措置~一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)~(令和5年2月16日時点)

令和5年度税制改正大綱でインボイス制度の負担軽減措置(案)が発表されました。その中から一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)について紹介します。

 ◇概要

基準期間の課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う課税仕入れについて、支払対価の額が1万円未満である場合には、インボイスの保存がなくても一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められます。

財務省の試算によると、全事業者の90.7%が対象とされます。

 ◇注意点

1. 適用対象者判定の特定期間について

特定期間における5千万円の判定に当たり、課税売上高による判定に代えて給与支払額の合計額の判定によることはできません。

 2. 適用できる期間と課税期間の関係について

令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間が適用対象期間となります。

そのため、たとえ課税期間の途中であっても令和11年10月1日以後に行う課税仕入れについては少額特例の適用はありません。

 3. 支払対価1万円未満について

・「税込」1万円未満の課税仕入れが適用対象です。

・一回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定することになります。

(1商品ごとの金額により判定するのではありません。)例えば9千円の商品と8千円の商品を同時購入した場合(合計1万7千円)は少額特例の対象とはなりません。

・役務提供である場合には、通常、約した役務の取引金額によることになります。例えば月額20万円(稼働日21日)で個人事業者に外注を行っている場合、稼働日で按分すると1万円未満となりますが、月単位での取引(20万円の取引)と考えられ、少額特例の対象となりません。


12. 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)について

令和5年度税制改正では、免税事業者が課税事業者を選択した場合の負担軽減を図るため、納税額を売上税額の2割に軽減する激変緩和措置(2割特例)を3年間講ずるとされています。

120日に公表された「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」<FAQ>では、2割特例の適用対象者は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった者であり、具体的には、

・免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者となる者

・免税事業者が課税事業者選択届出書を提出した上で登録を受けてインボイス発行事業者となる者

が対象となると解説されています<FAQ1参照> 

また、簡易課税制度選択届出書との関連についても解説されており、「免税事業者が、登録申請書とともに簡易課税選択届出書を提出した場合、2割特例は適用できないのか」という問に対して、「2割特例は、本則課税と簡易課税のいずれを選択している場合でも、適用が可能です。そのため、簡易課税制度選択届出書を提出していたとしても、申告の際に2割特例を選択することは可能です。簡易課税制度選択届出書を取り下げる必要はありません」と解説されています<FAQ6参照>

 <ポイント>

     事前の届出書は不要

     消費税申告時に、簡易課税・本則課税とも選択が可能

     消費税確定申告書に、その旨を付記する必要

参照

インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答

財務省(令和5120日時点)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/qa_futankeigen.pdf 


13. インボイス制度開始前後における短期前払費用の取扱いについて(令和5年3月17日時点)

事業を継続して行く上で実務的によく発生する機器の保守料、建物の賃借料などについて、事業年度末までに年払いを行った場合には「短期前払費用の取扱い」として当該支払額の全額を当該支払った日の属する事業年度の損金(個人事業の場合は「必要経費」以下同じ。)の額に算入することができます。併せて、上記支払った費用に係る消費税額についても、当該支払った日の属する課税期間で全額仕入税額控除を受けることができます。

[法人税法基本通達2-2-14、所得税法基本通達37-302、消費税法基本通達11-3-8]

  

 インボイス制度開始前におけるそれらの費用について、当該制度開始日である令和5101日をまたぐ年払いを行い全額費用計上する場合、現行の区分記載請求書のみで全額損金となり、消費税も全額仕入税額控除を受けることができます。しかし、年払いを行い、全額を一旦前払金として処理し、その後毎月費用へ振り替えていく場合、当該制度開始日以後の振替分については、適格請求書(インボイス)が必要となるためご留意下さい。

[具体例]:コピー機の保守料 11万円(うち消費税1万円)/月について年額132万円(税込)

      を令和541日に支払った。

      対象 : 法人 、 事業年度・課税期間 : 41日~331日。



国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A

    問88 (短期前払費用) 参照https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf