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出資持分のない医療法人と認定医療法人

出資持分のある医療法人

写真:診察イメージ

 平成19年の医療法改正までは出資持分のある医療法人が設立できました。改正後は出資持分のない医療法人しか設立できなくなりましたが、現在も旧来の出資持分のある医療法人が大多数を占めています。

 出資持分のある医療法人は出資者はそのオーナーシップを発揮できる、あるいは法人解散による残余財産の帰属先が各出資者となる、という点がメリットと考えられますが、逆に以下のようなデメリットが考えられ、医業事業承継における大きな障害となっています。

・実体のない持分も相続財産として評価され、多額の相続税を現金で支払う必要が生じる。

・経営の傍流にいる出資者から退社による払い戻し請求を受ける可能性がある。

出資持分なし医療法人への移行

写真:木

 上記問題を回避するためには出資持分なし医療法人へ移行することが考えられます。移行した場合、出資持分はゼロと評価されるため相続税課税の問題は回避され、また将来の払戻請求のリスクも無くなり、医療法人経営の安定性が担保されます。反面、解散時の残余財産帰属先が国等になるというデメリットも生じます。

 持分なし医療法人へは社員総会にて定款変更を議決することにより移行ができますが、いくつかのハードルがあります。

・移行にあたり社員たる出資者から払い戻し請求を受ける可能性がある。

・移行に際し相続税法66条4項の不当減少要件をクリアできない、つまり相続税または贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合は医療法人に贈与税が課されることになる。

 これらの問題点が具体的に何を引き起こすか、回避することや着地点を見出すことが可能か、十分に吟味理解したうえで話を進めることが肝要です。

認定医療法人制度

写真:診察イメージ

 厚生労働省は持分なし医療法人への移行を促進するため、令和8年12月31日まで税制優遇措置や低利の融資などを受けられる「認定医療法人」制度を実施しています。

 上記期間中に厚生労働省に移行計画を申請し、認定を受けることにより相続税・贈与税の納税が猶予され、認定の日から3年以内に出資持分を放棄すれば猶予税額が免除されるという制度です。

 この場合の贈与税とは上述の66条4項不当減少要件に係る贈与税ではないことが当制度の大きなハードルとして残っていますが、上記期間中に相続が発生した場合、あるいは段階的に退社払い戻しが生じ他の出資者への贈与が生じることになる場合など、当制度が活用できる機会も多くあります。また、福祉医療機構による経営安定化資金貸付も利用できます。

 我々は持分なし医療法人への移行と払い戻し、認定医療法人制度の活用、さらには基金制度など、様々な制度・観点・シミュレーションを用いて熟慮し、医療法人の安定的発展的な経営に寄与したいと考えています。是非ご相談ください。