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過去の税制(2021年)

2023年
2022年

令和3年12月2日 電子取引データの保存について

田畑 太朗

 電子帳簿保存法の改正が行われ、令和4年1月1日より電子取引データの紙保存が廃止されます。電子取引データとは、領収書や見積書、契約書などの取引情報の授受を電子データで行ったものを指します。
 この度の改正により、電子データで受領、または交付する請求書・領収書等については電子データでの保存が必要となります。
 また、改正後は次の要件を満たした形で電子データを保存する必要があります。

  1. 検索機能の確保
    (1)「取引年月日」「取引金額」「取引先」を検索条件に設定できること
    (2)日付と金額について範囲指定検索ができること※1
    (3)複数条件検索ができること※1
  2. タイムスタンプの付与等
    電子取引データの受領後「約2か月以内」にタイムスタンプを付与すること※2
    ※1 税務職員の求めに応じて電子取引データを提供する場合には不要とされています。
    ※2 データの訂正・削除の防止に関する事務処理規程を備え付けた場合には不要です。
 検索機能の確保はエクセル等の表計算ソフトで管理台帳を作成することで対応が可能です。また、タイムスタンプの付与については「データの訂正・削除の防止に関する事務処理規程」(A4の紙3枚程度)を備え付けることが現実的かと思います。
 また、電子取引データの保存要件を守らず、紙で保存を行った場合に青色申告の承認取り消しや税務調査時に経費として認められないのではないかという問い合わせが増えているようです。
 この問い合わせについては、国税庁の電子帳簿保存法一問一答、お問合せの多いご質問(令和3年11月)の問42【補足説明】で、「その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。」と示されています。

 令和4年1月1日から改正に対応することが難しい場合であっても、直ちに青色申告の承認取り消しや税務調査時に否認される可能性は低いとのことですが、早めに対応することをお勧めいたします。

国税庁 電子取引データの保存方法 パンフレット
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf

国税庁 電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_03.pdf

国税庁 電子帳簿保存法一問一答 お問い合わせの多いご質問
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021010-200.pdf

令和3年11月1日 令和3年分の確定申告からスマートフォンを利用した申告が更に便利になります

 コロナ禍で外出がはばかられる中、確定申告書の提出のために、混雑しがちな税務署に行きたくはないものです。国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って金額等を入力するだけで、自宅からいつでも所得税、消費税及び贈与税の申告書や青色申告決算書・収支内訳書等の作成・e-taxによる送信(提出)・印刷ができます。さらに、令和3年分確定申告からは新たなサービスが開始され、より便利になります。

 令和3年分確定申告から開始予定の新たなサービスの内容は次のとおりです。

①ICカードリーダライタ無しでe-taxできます
 パソコンで申告書を作成される方も、スマホのアプリ(マイナポータルアプリ)でパソコン上に表示されたQRコードを読み取れば、ICカードリーダライタを使用せず、マイナンバーカード方式によるe-tax送信ができるようになります。
 この方法では、パソコンでの事前の設定(事前準備セットアップ)が不要となります。

②スマホのカメラで源泉徴収票を自動入力できます
 スマホのカメラ機能により紙の源泉徴収票を読み取ることで、記載されている支払金額や各種控除額等の文字認識が行われ、必要事項が自動的に転記されます。
 これにより入力の手間を省略することができ、記載漏れや転記ミスの防止にもつながります。

③スマホ申告の対象範囲が増えます
 特定口座年間取引報告書(上場株式等の譲渡所得等・配当所得等)、上場株式等の譲渡損失額(前年繰越分)及び外国税額控除がスマホの画面の大きさに適したレイアウトで表示され、入力しやすくなります。

 また、所得税の確定申告に関する疑問は、質問したいことをメニューから選択するか、自由に文字を入力することにより、AIを活用したチャットボット“税務職員ふたば”が自動回答します。チャットボットでの相談は令和4年1月中旬から公開予定で、土日や夜間でも利用することができます。

詳細は国税庁ホームページをご覧ください
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/r3_smart_shinkoku/index.htm

国税庁パンフレット
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/r3_smart_shinkoku/pdf/01.pdf

令和3年10月5日 国税庁 令和3年分年末調整の各種書式を公表

 国税庁は令和3年分年末調整のための各種様式等を公表しました。令和3年度税制改正に伴う押印義務の廃止により、「令和3年分給与所得者の保険料控除申告書」などの様式では、従来は氏名記入欄に設けられていた押印欄が削除されました。また、「令和4年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などには、記入者である従業員等の利便性向上のため、新たに2次元コードを設けられました。これにより従業員等がスマートフォンでその2次元コードを読み込むことで、詳細な記載方法を確認することができるようになります。

 各種様式では、押印欄の削除及び2次元コードの新設のほか、「令和3年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の所得金額調整控除申告書の欄に2点の変更がありました。
 1点目は、年末調整の対象となる給与の収入金額が850万円以下の場合には所得金額調整控除の適用を受けられず記入する必要がないことから、その旨が記載欄上部に明記されています。
 2点目は、特別障害者欄の特別障害者に該当する者が扶養控除等申告書に記載している特別障害者と同一の場合、従来は該当事実又は扶養控除等申告書のとおりである旨を記入する必要がありましたが、令和3年分からはチェック欄の記入だけで良くなりました。

 また、令和4年分の源泉徴収簿については、令和3年分までは給与所得と退職所得に対する源泉徴収簿が1つの書類にまとまっていましたが、退職所得の税額計算の欄が削除され、給与所得に対するもののみになりました。名称も「令和4年分給与所得に対する源泉徴収簿」に変更されています。なお、退職所得に対する源泉徴収簿については、今後公表される予定です。

詳細につきましては、国税庁HPをご参照下さい。

令和3年9月3日 雑損控除の対象となる自動車

全国各地で発生した記録的な大雨により被災された皆さまに、心からのお見舞いを申し上げます。こうした自然災害等により自動車やバイクなどの車両に損害を受けた場合、その車両が生活に通常必要であると認められれば、雑損控除の適用で所得税額を軽減することができます。今回は、その軽減措置についてご紹介いたします。

雑損控除とは、災害や盗難などにより生活に通常必要な資産に受けた損失額のうち、一定額を総所得金額等から控除するというものです。損失額が大きく、災害等発生年で控除しきれない場合には、翌年以後3年間を限度に繰り越して各年で控除できます。

生活に通常必要な車両に該当するものとして、具体的には、専ら通勤に使用している自動車などが挙げられます。これに対し、事業用として使用するトラックやワンボックスカー、専ら趣味娯楽のために所有するスポーツカーやキャンピングカーなどは該当しません。
 この点、生活に通常必要な資産かどうかは、災害等発生直前における保有目的、使用状況等を総合勘案して判断します。例えば、事業用として保有・使用していたワンボックスカーを、新型コロナの影響等で事業廃止後、企業に就職したため通勤用として保有・使用していたところに災害等が発生した場合は、生活に通常必要な車両として雑損控除の適用を受けることができます。

なお、損失額は、損害を受けた時の直前の車両の時価で計算しますが、被災資産ごとに損失額を計算することが困難など一定の場合には、取得価額から減価償却費を控除した額に、被害状況に応じて定められている被害割合を乗じて計算してもよいとされています。被害割合は、国税庁ホームページの被害割合表で確認できます。

詳細につきまして国税庁ホームページ災害関連情報をご確認ください。
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/index.htm

令和3年8月3日 -東京オリンピック・パラリンピックに関係する税金の特例-

有村 透

 先日、東京オリンピック・パラリンピックが開幕しました。今大会は、大規模かつ国家的に特に重要なスポーツの競技会であり、その成功のため、選手を含めた全ての大会関係者に係る課税の公平性・均一性を確保する観点から、開催地である我が国において特別な対応が求められ、税制上様々な特例措置が設けられました。今回は、その特例措置をご紹介いたします。

○オリンピック・パラリンピックの報奨金
 オリンピック・パラリンピックのメダリストは、日本オリンピック委員会(JOC)、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)、これらの加盟団体から報奨金が交付されます。スポーツ庁によると、JOCでは金500万円、銀200万円、銅100万円、JPSAでは金300万円、銀200万円、銅100万円とされています。
 報奨金は、一般的には一時所得として課税対象になります。しかし、オリンピック・パラリンピックの報奨金に限り、所得税・住民税が非課税となります。

 スポーツ庁 メダリストに対する報奨金の非課税措置について
 https://www.mext.go.jp/sports/content/20210120-spt_kyosport-000012215_2.pdf

○非居住者及び外国法人に係る課税の特例
 東京オリンピック・パラリンピックに参加する選手その他大会の円滑な準備又は運営に関する業務を行う非居住者の給与等やその業務を行う外国法人が支払を受ける使用料などについては、それぞれ所得税及び法人税を課さないこととされています。

 国税庁 平成32年(令和2年)に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課税の特例の創設
 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/31taikou_05.htm#05_04

○宿泊税の課税停止
 宿泊税は各自治体が独自に実施している地方税で、各自治体にある宿泊施設に宿泊し、一定の条件に該当することで課税されます。
 東京都の場合は、この宿泊税について、令和2年7月1日から令和3年9月30日までの間は都内の旅館・ホテルの宿泊者全てに対する課税が停止されます。

 東京都主税局 宿泊税
 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/shuk.html

令和3年7月2日 電子納税証明書がPDFで発行可能に

令和3年7月1日から電子納税証明書について、PDFファイルによる発行が可能になりました。

 電子納税証明書とは、国税庁のe-Taxから交付請求して取得できる電子ファイル形式の納税証明書のことです。納付額や未納額等が記載されており、一般的に、税金の延滞等がないことを証明するため、金融機関からの融資を受ける際や自治体の入札に参加する際に提出が求められます。

 これまでも申請者がオンラインで交付請求すれば、書面又はデータで納税証明書を取得することができましたが、従来のXML形式の電子納税証明書は、データでの提出が可能な場合には使用できますが、XMLファイルを紙に印刷して納税証明書として使用することはできず、書面での提出が必要であれば、都度、書面での交付請求手続きを行う必要がありました。また、従来のオンラインによる交付請求では、税理士等の代理人が電子委任状を送付できず、電子納税証明書を代わりに受け取ることはできませんでした。

 そこで、令和2年度改正で見直しが行われ、令和3年7月1日から新たにPDFファイルによる発行が可能になりました。今回の改正により以下のようなメリットがあります。

  1. 書面による納税証明書の提出が可能な場合でも納税証明書の申請から受取までの手続きを自宅やオフィスで完結できるようになる。
  2. PDFファイルには真正性を担保するためのQRコードが付されており、提出先が複数ある場合でも電子納税証明書の期限内であれば、データを印刷することで何度でも使用できる。
  3. 電子委任状を添付することで、税理士等の代理人がe-Taxを利用して来署することなく交付請求から受領までの一連の手続きを行うことが可能になる。

 なお、e-Taxでの送信及びメッセージボックスの確認には、マイナンバーカード等の電子証明書が必要となります。

 詳細については国税庁ホームページ及びリーフレットをご参照ください。

 〇国税庁HP
 https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/denshi_nouzei/index.htm

 〇「ネットで便利に納税証明書」
 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0021003-181_01.pdf

 〇「令和3年7月から納税証明書のデザインが変わります」
 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0021003-181_02.pd

令和3年6月2日 【助成金の受領と消費税の返還】

 自治体等から支給される助成金等の中には、その助成金等を受領して行う取引に係る“消費税の仕入控除税額”の返還が必要なものがあります。
 その理由として、消費税法上、助成金等の受領は「不課税」取引となりますが、その助成金等を受領して行う固定資産等の購入は「課税」取引となり、仕入税額控除の対象となります。助成金等の中には、課税仕入れに係る消費税相当額を含めて支給されるものもあり、こうした助成金等を受領した事業者は、助成金等に係る課税売上高がないにもかかわらず、仕入税額控除が可能となってしまうためです。

 こうした助成金等を受領した場合の法人の税務処理について、一旦助成金等の全額を雑収入として収益計上し、翌事業年度で返還した仕入控除税額を雑損失として計上することとなります。

 つまり、①仕入控除税額が確定するのが消費税の確定申告時であること、②法人税の取扱いで前期の取引に係る損失が当期に生じた場合、前期に遡っての修正は不要とされていることから、助成金等を受領した事業年度での特段の処理は不要となります。

 ただし、仕入控除税額の返還が必要な助成金等に該当するか否かは、その助成金等の交付要綱等で確認する必要があります。返還時の手続きについて、例えば、医療法人向けの緊急包括支援交付金(医療分)の場合、返還する仕入控除税額等を記入した報告書の提出を求める自治体もあるため注意が必要です。

以下、愛知県HPを参照ください。
<補助金に係る消費税仕入控除税額について>
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/imu/kango-shohizei.html

令和3年5月5日 新型コロナウイルスによる国税の申告期限の個別延長の取扱いを変更

 令和3年4月6日に国税庁は、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を更新しました。
 新型コロナウイルスの影響により、期限までに申告・納付等することができないやむを得ない理由があることにより個別指定による期限延長を申請する場合、これまでは申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」などと記載する等の簡易な方法が認められていましたが、令和3年4月16日以降は「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を作成・提出する必要があります。

【期限の個別延長が認められるやむを得ない理由の具体例】
 新型コロナウイルス感染症に関しては、これまでの災害時のように資産等への損害や帳簿書類等の滅失といった直接的な被害が生じていないものの、感染症の患者が把握された場合には濃厚接触者に対する外出自粛の要請等が行われるなど、自己の責めに帰さない理由により、その期限までに申告・納付等ができない場合も考えられます。
 そのため、これまでの災害時に認められていた理由のほか、例えば、次のような理由により、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、困難な理由がやんだ日から2か月以内の範囲で個別の申請による期限延長(個別延長)が認められることとなります。

〔個人・法人共通〕

①税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます。)が感染症に感染したこと

②納税者や法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること

③次のような事情により、企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務体制が維持できない状況が生じたこと

  • 経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合など、当該部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと
  • 学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること
  • 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが求められ、在宅勤務の体制も整備されていない等の理由から、経理担当部署の社員の多くが業務に従事できないこと

〔個人〕

④納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実があること

⑤次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関・自治体等から外出自粛の要請を受けたこと

  • 感染症の患者に濃厚接触した疑いがある
  • 発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある
  • 基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある

⑥新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されていること

〔法人〕

⑦感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じたこと

※上記以外にも、個別の申請により申告期限等が延長される場合がありますのでご不明な点がございましたらご相談ください。

詳細につきましては国税庁HPをご確認ください。

国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ (nta.go.jp)
(令和3年4月6日更新)

令和3年4月5日 -国税庁 低解約返戻金型保険の所得税の取扱い変更を検討-

有村 透

 保険契約から一定期間は返戻率が低く設定される“低解約返戻金型生命保険”(注)の所得税の取扱い変更について、国税庁が検討に入ったとの報道がありました。この保険契約の契約者等を法人から従業員等に変更することで所得税の負担軽減を図る手法が封じられることになりそうです。

○名義変更時に“給与課税”、解約時に一時所得として“2分の1課税”
 低解約返戻金型生命保険は、以下の①~③の手順によって所得税の負担軽減を図る目的で使われることがあります。

 ①契約者等を法人とし、被保険者を従業員等として保険契約を締結

 ②返戻率が低い期間中に契約者等を法人から従業員等に変更

 ③返戻率が引き上げられた後に、従業員等が保険契約を解約し解約返戻金を受け取る

 上記②契約変更時の保険契約の権利は、その変更時に評価(所得税基本通達36-37(保険契約等に関する権利の評価))される低額な解約返戻金額で、「給与所得」として課税されます。上記③従業員等が受け取る解約返戻金は「一時所得」として課税されるため、“2分の1課税”が適用されます。

○給与課税すべき金額が「解約返戻金額」から「資産計上額」に
 今回、見直しが検討されているのは、②契約変更時の給与課税すべき経済的利益の金額です。具体的には、解約返戻金が法人の資産計上している保険料の7割未満の場合は、「資産計上額」で評価するように見直す方向で検討がされているようです。現行の、契約変更時の経済的利益を低額な解約返戻金額で評価することを定めた 所得税基本通達36-37 の改正が見込まれます。
 これにより、上記②給与課税の対象額が増加することとなり、この保険契約の仕組みを利用した税務メリットが低減すると言えます。

 この見直しは、2019年に新設された法人税基本通達9-3-5の2(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)に基づき資産計上されている契約(2019年7月8日以降の契約)について、今回の改正日後に名義変更を行った場合に適用することを想定しており、本年6月末の改正を目指すとのことです。

(注)低解約返戻金型保険とは、加入から保険料の支払いを続け、一定期間中は返戻率が低い期間が続き、その一定期間を経過した時点から返戻率が急激に上昇する保険。

出典:日本経済新聞 電子版「『節税保険』生保と攻防再燃 国税庁、抜け道ふさぐ」
<https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF168RP0W1A310C2000000/>
2021年3月16日 20:00 (2021年3月17日 5:31更新)

令和3年3月1日 【法人設立ワンストップサービスの対象がすべての手続きに拡大】

 「法人設立ワンストップサービス」を利用して行うことのできるサービスに、令和3年2月26日より、新たに「定款認証」及び「設立登記」が追加されました。
これにより、既に令和2年1月20日から利用可能となっている設立登記後の各手続と併せて、法人の設立に伴うすべての手続は「法人設立ワンストップサービス」を利用して行うことができるようになりました。

 これまで、法人を設立する際には、定款認証や設立登記、設立届出書の提出といった複数の各種手続を行政機関毎にそれぞれ個別に行う必要がありました。
 しかし、「法人設立ワンストップサービス」ではマイナポータルという一つのオンラインサービスを利用することで、こうした複数回の手続を省き、手続のために各種行政機関に出向く必要がなくなるほか、24時間365日いつでもこれらの一連の手続を一度で行うことができます。
 ただし、国税関係手続については、e-Tax受付時間外に提出された場合は、翌稼働日に提出されたこととなりますので、提出期限には注意が必要です。

 本サービスでは、法人設立後に必要な国税、地方税に関する届出や手続のほか、雇用に関する届出などの行政手続、定款認証及び設立登記、GビズIDの発行を行うことができます。

 なお、本サービスを利用するに当たり、法人代表者のマイナンバーカード、マイナンバーカード対応のスマートフォンまたはパソコン、ICカードリーダライタ(パソコンを利用する場合のみ)が必要となります。

詳細につきましては国税庁HPをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/OSS.htm

令和3年2月2日 【医療費控除 令和2年分から明細書が必須に】

  令和2年分の所得税から医療費控除の適用を受けるためには、「医療費控除の明細書」の添付が必須となります。経過措置により、平成29年分から令和元年分までの各年分については、明細書の添付に代えて医療費の領収書の添付又は提示によることもできるとされていましたが、令和2年分以後は「医療費控除の明細書」の添付がなければ適用を受けられなくなります。
 令和2年分の所得税から医療費控除の明細書の添付が必要となり、領収書の添付等が不要となったものの、明細書に記載した医療費については、確定申告期限の翌日から起算して5年を経過する日までの間は、医療費の領収書(医療費通知を添付したものを除く)の提示又は提出を求められる場合があるので、自宅等で領収書を保存する義務があります。
 医療費控除の明細書は、①「医療費通知に記載された事項」、②「医療費(上記①以外)の明細」、③「控除額の計算」、で構成されており、①については、医療保険者から交付を受けた医療費通知を添付することで明細書の記載が省略できます。
 医療費通知とは、①被保険者等の氏名、②療養を受けた年月、③療養を受けた者、④療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称、⑤被保険者等が支払った医療費の額、⑥保険者等の名称、の全ての事項が記載されたものです。
 例えば、健康保険組合等が発行する「医療費のお知らせ」が該当します。

なお、医療費控除とは選択適用となるセルフメディケーション税制についても、医療費控除と同様に明細書の添付を要する点に注意が必要です。

詳細につきましては、国税庁HPをご参照ください。

令和3年1月6日 住宅借入金等特別控除等が延長されます

 令和3年度税制改正大綱では、新型コロナウイルスの影響による先行き不透明さなどを背景に、内需の柱となる住宅投資を幅広い購買層に対して喚起するため、住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除)、住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置の拡充がされました。

【住宅ローン控除の見直しについて】

  1. 住宅ローン控除の控除期間13年間(通常の10年)の特例について延長し、一定の期間に契約した場合、令和4年12月31日までの入居者が対象となります。一定の期間とは次に定める期間内に契約が締結されたものをいいます。
    新築の場合:令和2年10月1日から令和3年9月30日までの期間
    建売・中古・増改築の場合:令和2年12月1日から令和3年11月30日までの期間
  2. 面積要件については、上記の延長した部分に限り、合計所得金額1,000万円以下の者については床面積40㎡から50㎡までの住宅も対象となります。
※上記以外の要件(借入限度額、控除期間、控除率等)は、現行の控除期間13年間の特例措置と同様です。

 なお、会計検査院の指摘を踏まえ、年末時点の借入金残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、現行制度の控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正で見直すこととされています。

【住宅取得資金に係る贈与税非課税措置の拡充】
 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、令和3年4月1日から令和3年12月31日までの間に住宅用家屋の新築等に係る契約を締結した場合における非課税限度額が引き上げられました。
 令和3年4月1日より消費税の税率10%が適用される住宅用家屋の新築等に係る非課税限度額は1,500万円から1,200万円へ縮減予定でしたが、同額の1,500万円に据え置くこととなりました。また、上記以外の住宅用家屋の新築等により取得した者は、令和3年4月1日より1,000万円から800万円へ縮減予定でしたが、同じく同額の1,000万円に据え置くこととなりました。上記の非課税限度額は、耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋に係る限度額であり、一般の住宅用家屋に係る限度額は、それぞれの非課税限度額から500万円を減じた額となります。
 併せて、床面積要件について、住宅ローン控除と同様の措置が適用されます。また、床面積要件については、「特定の贈与者から住宅取得資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例」についても同様にとなります。
 上記の改正は、令和3年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得資金に係る贈与税について適用されます。