令和4年度与党税制改正大綱では、世界的なカーボンニュートラルの実現への流れのなかで、住宅税制においても環境性能に応じた優遇措置が講じられる内容となりました。
令和3年に適用期限切れとなる住宅ローン減税は、適用期限が4年間延長され、控除率が1.0%から0.7%へ引き下げられたものの、新築住宅の控除期間は10年から13年へと伸長しました。
一定の省エネ性能を保持した住宅については、控除額を大きく拡充する上乗せ措置が講じられており、この点で直近の消費増税及びコロナ禍による反動減対策から、住宅の省エネ性能向上による脱炭素化へと軸足を移す姿勢が鮮明に打ち出されています。さらに、その対象がこれまでの新築住宅に加えて、既存住宅にも及ぶこととなった点については、既存住宅の流通促進と良質な住宅ストックの形成に寄与するものとして評価できます。カーボンニュートラル推進の観点からも、既存住宅ストックをより有効に活用していくことが求められます。今後、消費者が住まいを選ぶ基準としてより一層「省エネ性能の保持」の点にスコープがあたることは間違いありません。
また、住宅ローン控除の対象となる住宅について、築年数要件が廃止され、「昭和57年以降に建築された住宅」等が住宅ローン減税の対象に加えられたほか、新築住宅の最低床面積要件の40平方メートルへの引下げが存置されました。コロナ後を見据え、住まいへの多様なニーズを充たす厚みのある既存住宅流通市場の形成・発展につながることを期待しています。
このほか、住宅取得資金贈与の非課税措置の特例、居住用財産の買換え等の譲渡損失の特例などの特例措置も延長され、固定資産税等の負担調整措置も商業地等について引き続き措置が講じられる結果となりました。特に、土地の固定資産税については、昨年度はコロナ禍での住宅地も含めた据え置きでしたが、今年度改正は、現下の経済状況や不動産市況等の実態も踏まえて、商業地の地価上昇に伴う負担抑制措置2.5%半減が図られ、激変緩和がされています。
参考:自民党 https://www.jimin.jp/news/policy/202382.html
すでにこのコラムでお伝えしている通り、令和5年10月1日から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。適格請求書等保存方式の下では、税務署長に申請して登録を受けた課税事業者である「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」(いわゆるインボイス)等の保存が仕入税額控除の要件となります。
ところで、11月10日、日本商工会議所は、「消費税インボイス制度」と「バックオフィス業務のデジタル化」等に関する実態調査の結果を発表しました。
https://www.jcci.or.jp/20211110kekka.pdf
ポイントは次の通りです。
1.インボイス制度導入への準備状況等
〇約6割の事業者がインボイス制度導入に向けて特段の準備を行っていない。特に、「売上高1千万円以下の事業者」では7割超と、小規模な事業者ほど準備が進んでいない。
○インボイス制度導入に向けた課題は、「そもそも制度が複雑でよく分からない」が4割超で最多。その他、「コロナで先行き不透明の中、制度を理解する余裕もない」といった声も。
○課税事業者の2割超が免税事業者との取引を見直す意向。
○免税事業者の約2割は「課税事業者になる予定」と回答。また、「廃業を検討する」と回答する事業者も4%存在。
2.バックオフィス業務のデジタル化状況等
○「売上高1千万円以下の事業者」の3割超が、経理事務について税理士等外部専門家の関与なくすべて社内で対応、また、9割超が1人で経理事務に従事している。後者のうち約75%は、代表者・役員が経理事務を兼務して行っている。
○帳簿の作成業務について、「売上高1千万円以下の事業者」では約5割が手書きで行っており、また、約1割が「1年ごと」に作成している。
○受発注業務について、「売上高1千万円以下の事業者」では約8~9割が、電話、FAX、実訪といったアナログで行っている。
いかがでしょうか。約6割の事業者が準備段階に入っていないという驚きの実態が明らかになったわけですが、消費税導入以来の大改正の割には響いていないことに危惧を抱きます。
衆議院選挙が終わりました。「簡素で公平な税制を実現する」という公約を掲げた某政党がありましたが、この「公平な税制」と何でしょうか?
税の公平性については、経済力が同等の人は等しく負担すべきという「水平的公平」と、大きな経済力を持つ人はより多く負担すべきであるという「垂直的公平」の2つがあります。またこれに加え、最近では、「世代間の公平」という視点も重要になってきています。
この税の公平性に関して、財務省のメールマガジンの中に、公平の捉え方は人それぞれ異なりうるため実現が非常に難しい、ということをとても分かり易い例で示していて、個人的に大変勉強になりましたので、少々長いですが、以下にご紹介させていただきます。当時の主税局長の尾崎護さんが執筆されたものだそうです。
「ある課で新年会が行われたとします。その費用をどのように分け合ったら最も公平かということを考えてみましても、課員全員の納得が得られる分担方法を見つけるのは、議論を始めてみればそう簡単ではありません。
ある人は費用を人数で割って均等に負担するのがいいと思うでしょう。課員全体が同じご馳走を食べ、同様にお酒を飲んだのだから、費用は均等に負担すべきだという考えです。
ある人は、課長は平社員の何倍かを払い、それに応じて課長代理や係長も相応に平社員より余計に払うのが当然だと考えるでしょう。OL一年生などはただにしていいと主張するかもしれません。給料の額に応じて負担するという考えがその背後にあります。
もう少し厳密な人は、同じ係長同士、平社員同士でも給与水準に応じて差をつけようと主張するかもしれません。お酒を飲まない人の負担は減らすべきだという意見も出るかもしれません。しかし、そこまで言い出すと折角の新年会が楽しくなくなり、懇親の意味がなくなるという声が出るかもしれません。
新年会の例は会社の課内の話ですから、それぞれの給与の額が分かっています。従って、それぞれの分担額も役職に応じて定めれば大体よいのですが、実は平社員の中に親の遺産を受け継いで莫大な地代収入がある人がいたとします。そういう場合、課長さんにしてみれば、腹の底では「何でオレがあいつの何倍も会費を支払わなくてはいけないのか」と不公平感を味わっているかもしれません。本当はサラリー以外の収入もみんな把握して、それで分担を決める方が、水平的公平の面からも、また垂直的公平の完全を期す上でもよいのではないかと思われます。
しかし、給与以外の収入まで課員に明らかにさせるということはまずありえないことです。そこまでやれとなれば、幹事のなり手がいなくなってしまうでしょう。つまり執行が不能になります。」
いかがでしょうか。「公平」の概念はとても難しいことがわかります。しかし、税金は費用分担の話ではなく、国家による国民の財産権の「侵害」だとすれば、違った考えもありそうです。
財務省の税制メールマガジンのバックナンバーはこちらからご覧いただけます。
http://krs.bz/zaimu/c?c=77&m=57751&v=083304f7
令和3年9月末、国税庁が「令和2年分民間給与実態統計調査結果について」を公表しました。
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2020/pdf/001.pdf
調査結果の概要は、次のとおりです。
民間給与の動向ですが、令和2年、コロナ禍により、民間の給与所得者数は5,928万人、前年比62万人(1.0%)減でした。給与の総額は219兆円で、前年比12兆円(5.4%)減、源泉徴収された所得税額は10兆円で、前年比7,984億円(7.2%)減でした。
軒並み減少し、過去7年連続して改善していた給与総額に大きなブレーキ(5.4%減少)がかかりました。1年を通じて勤務した給与所得者の平均賞与は65万円で、リーマンショック後以来の大幅減少(8.1%減少)となっています。業種別では宿泊業、飲食サービス業の減少が目立ちます。
令和3年分の年末調整がまもなく始まります。緊急事態宣言が解除されたとは言え、宿泊・飲食の需要がコロナ禍以前に復元するには時間がかかりそうですので、このマイナス傾向は2年連続と見ざるを得なく、コロナが与えた経済への悪影響の大きさに驚きます。
もう1点。所得税を誰が多くを負担しているかです。
調査結果によれば、年間給与収入が500万円以下の階層は、全給与所得者の69.3%を、給与収入額では43.5%を占めていますが、税額では15.9%にすぎません。一方、1,000万円超の階層は納税者数で4.9%にすぎませんが、税額では53.3%に上がっています。現行の所得税は中高所得層に負担が偏っている構造が浮き彫りになっています。
衆議院選挙の各党の公約実行の中で、これら給与所得課税の現実をどのようにより良いものにするべきか、異例の短期決戦となった年末の税制改正の動向に注目です。
先日、日本経済新聞に「仮想通貨、申告漏れにメス~国税当局が一斉調査、追徴6億円超。不正確な節税策広まる」という大きな記事が掲載されていました。7月新刊書籍である「実録:脱税の手口」でも同様の事件が紹介されていますので、関係のある方は要注意です。
仮想通貨のことは、今は「暗号資産」と言いますが、代表的なものに、「ビットコイン(BTC)」「リップル(XRP)」「イーサリアム(ETH)」などがあり、日本経済新聞で取り上げられていたのは「エイダ(ADA)」です。
暗号資産は価格が乱高下することが特徴ですが、損益が発生するのは、持っている暗号資産を売却した時や、法定通貨と交換した時だけではありません。例えばビットコインを売ってイーサリアムを買うといった暗号資産の交換も損益が発生します。保有する暗号資産Aを他の暗号資産Bと交換した場合、暗号資産Aで暗号資産Bを購入したことになりますので、暗号資産Aの譲渡に係る所得金額を計算する必要があります。
暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得に区分されます。所得税法上、他の所得と通算できる損失は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の金額の計算上生じた損失に限られます。雑所得については、これらの所得に該当しませんので、雑所得の金額の計算上生じた損失がある場合であっても、他の所得から差し引く(通算する)ことはできません。
外国為替証拠金取引(いわゆるFX)は、金融商品取引法上の金融商品先物取引等に該当しますので、申告分離課税の対象となります。暗号資産の証拠金取引は、FXと同様に金融商品先物取引等に該当するものの、租税特別措置法の規定により、申告分離課税の対象から除かれていますので、その取引により得た所得については、総合課税の対象になります。
そしてついに、暗号資産交換業者から年間取引報告書が送付されるようになります。年間取引報告書の様式例は、国税庁のQ&Aに掲載されています(暗号資産交換業者により、様式が異なる場合があります。)。
暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)令和3年6月国税庁
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
コロナ禍の令和3年も残り3か月となりました。
この時期は「本年中の贈与をどうするか」が、毎年恒例の相談項目ですが、親子間でのポピュラーな相続税対策としての住宅取得等資金贈与の非課税措置の適用期限に留意してください。というのは、令和3年度税制改正では、住宅取得等資金贈与の非課税措置について、床面積要件の緩和や、非課税限度額引上げ等の見直しは行われたものの、同制度の適用期限延長は行われませんでした。現行の適用期限は令和3年末とされていることから、単純延長はないのかもしれませんので、改めて現行制度の概要と期限を確認したいと思います。
この住宅取得等資金贈与の非課税制度は、平成27年1月1日から令和3年12月31日までの間に、合計所得金額が2,000万円以下の20歳以上の子・孫(受贈者)が祖父母・父母(直系尊属)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に、一定額(省エネ等住宅なら1,500万円、一般住宅なら1,000万円まで等)が非課税となるものです。
令和3年度税制改正で、令和3年1月1日以後の贈与について、合計所得金額1,000万円以下の場合に床面積要件の下限が50㎡から40㎡に緩和され、また上記のような非課税限度額に据え置かれました。現行では令和3年12月31日までに住宅取得等資金の贈与を受け、かつ、その資金の全額を充てて住宅の新築、取得又は増改築等に係る契約を締結していることが要件の一つとなります。なお贈与と契約締結の順番は問いません。
この贈与及び契約締結時期に係る要件のほか、住宅の新築等は贈与年の翌年3月15日までに行わなければならず、新築の場合は、同日において新築工事が完了している(いわゆる棟上げまで完了している場合を含む)こと、分譲マンションや建売住宅購入の場合には、同日までにその引渡しを受けていること等が必要となります。
ところで、政府税制調査会の「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」に、気になる一節があります。「資産の早期移転による消費拡大を通じた経済の活性化を図るための時限措置として、各種の贈与税非課税措置が設けられているが、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっており、格差の固定化につながりかねない側面がある。機会の平等の確保の観点などを踏まえ、資産移転の時期の選択に中立的な税制を構築していくこととあわせて、これら各種の非課税措置のあり方についても検討していく必要がある。」というものです。「限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっており、格差の固定化につながりかねない」という指摘は重く、何らかの規制が加わると考えられますので、早めの行動が必要かもしれません。
複数税率に対応した仕入税額控除の方式として、令和5年10月1日から「適格請求書等保存方式」(いわゆる「インボイス制度」)が導入されます。インボイス制度は、売り手が買い手に対して正確な適用税率、税額を伝える仕組みとして導入されるもの、とされています。複数税率のもとにおいて、例えば、売り手が軽減税率で申告し、買い手は標準税率で仕入税額控除をするといった食い違いを防ぐことができる仕組みであると考えれば、意義はあります。
もう一つの狙いが、免税業者からの仕入れなのに、課税取引であれば、仕入税額控除(税込取引金額の10/110、又は8/108を控除)する仕組みがよろしくない(消費税額が国庫に入らない)ので改善=増税することにあります。
財務省の資料によると、軽減税率の財源として、インボイス制度の導入により2,480億円程度の増収を見込んでいるということになっています。この試算の根拠(免税事業者のうちどれだけの業者が課税業者になると見ているのか)を問われた令和元年2月26日国会審議の中で政府参考人は、「インボイス制度の導入による増収を見込むに当たりまして、免税事業者の数、約488万者、これは平成27年の国勢調査をもとに出している数字でございますけれども、ここから、農協等に出荷する農林水産業、非課税売上げが主たる事業の事業者を除いた免税事業者372万者程度に対しまして、BtoB取引の割合でございます4割程度を乗じた161万者程度が課税事業者に転換する計算となっているところでございます。」と回答しています。
インボイス制度においては、免税事業者との取引に係る仕入税額控除については、原則、制限されます。売り手である免税事業者は、インボイスとしての記載事項を満たした請求書を交付することができないため、買い手において仕入税額控除の適用を受けるための要件を満たせないことになります。
したがって買い手である事業者は、免税事業者と取引を行った場合、消費税の納付税額がこれまでよりも大きくなるデメリットが発生しますし、取引先ごとに免税事業者か否かという区分をしなければならないという実務負担が発生します。このことから、免税事業者は適格請求書等を発行できないため、対事業者取引から排除や不当な値下げを強いられるおそれがあります。このため、あえて課税事業者になることを選択することが考えられる(そうすると上記の2,480億円増税の負担者となる)、という影響が懸念されています。
振り替えれば2010年代には、2回の消費増税があったわけですが、免税事業者にとっては、コロナ禍の中、3回目の増税になりかねません。
参考資料
国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf
消費税インボイス制度の開始を前に、いよいよ導入準備が始まりました。
インボイス制度が開始されるのはまだ2年先ですが、事業者間の運用方法の検討に加え、請求データなどのシステム改修が発生するケースを想定すると「猶予期間は少ない」と言われています。
最大の問題点は、令和5年10月1日以降、適格請求書発行事業者以外の事業者からの課税仕入れは、原則として仕入税額控除の対象外となることです。これについては、経過措置により、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの3年間は「仕入税額相当額の80%」、令和8年10月1日から令和11年9月30日までの3年間は「仕入税額の50%」を仕入税額とみなして控除できる、というややこしい制度になっています。
事業者としては、なるべくインボイス制度導入前に取引先の洗出しを行い、1.登録事業者、2.未登録事業者、3.免税事業者に分類したいところです。とはいえ、現実的には取引先が課税事業者であるか否かなどが不明で、かつ相手方に直接確認しづらい上に、仮に「免税事業者」であった場合の対応方針に難儀している、との声も多く聞かれるようになりました。
日本加工食品卸協会のホームページでは、卸売業各事業者向けに作成した「インボイス制度対応-企業間取引の手引き」の「取引先への登録番号の通知とご依頼に関する文書例」が発表されています。実務への参考となりますのでご一読ください。
http://nsk.c.ooco.jp/pdf/20210521_1.pdf
具体的には、本年10月1日以降早めに適格請求書発行事業者の登録申請を行い、税務署から登録通知書の交付を受けた後、取引先に対して「自社の登録番号」を通知すると同時に、取引先から「登録番号」や「免税事業者である場合はその旨」について個別に連絡を求める方法です。
こうした方法により、登録を予定している事業者に対し登録申請を促すとともに、免税事業者の一定の把握につながることが期待できそうです。
顧問先の皆様のお手元に来月以降、このような通知書が舞い込むことになりそうですが、詳しい説明は当事務所スタッフまでお問い合わせください。
コロナ禍の終息が見通せません。加えて、8月の全国的な豪雨災害(一方で世界的な森林火災等)には驚きます。顧問先企業経営者の皆さんと話していると、いつ、何が起きるか、先行きの不安感を感じざるを得ません。
一方で、「M&A」に関するDMが急増しており、「なぜ当社に届いているのか?」との話題も多くなってきました。「M&A仲介業」は、特別な資格や許可申請が必要ではないので、金融機関系から税理士や会計士が始めた小さな会社まで100社以上はあるのではないか?と思わざるを得ません。
中小企業庁では、盛んに、「今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定。現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性。」と説いており、更には、補正予算を組んでまで、第三者承継を支援しています。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2021/210614shoukei.html
ここでいう「事業承継・引継ぎ補助事業(事業承継トライアル)」は、後継者不在の中小企業が社外の第三者を後継候補者として事業承継に向けた準備を行う際の手順、課題、対応策等を明らかにし、その結果として得られる事業承継に向けた準備の「型」、特に後継者教育の「型」を共有知として蓄積しようとするものです。
また、中小企業のM&Aの草分け的な存在である(株)日本M&Aセンターは、大規模かつ充実したWEBセミナーを開催します。アフターコロナのM&A戦略を考えながら、ご参加いただくのも有意義ですのでご案内します。
https://www.nihon-ma.co.jp/seminar/conference/
現在、国税庁の広報活動で盛んに事業者登録が呼びかけられています。皆さんのお手元にもチラシが届いているのではないでしょうか。
令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が導入されます。適格請求書(インボイス)を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られ、この「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。
そして、登録申請書の提出が可能となるのは、令和3年10月1日以降です。
そもそも何が始まろうとしているのでしょうか。そしてインボイスとは何でしょうか。
消費税の税額計算は、「売上げに係る税額」「仕入れに係る税額」をそれぞれ算出し、その上で「売上げに係る税額」から「仕入れに係る税額」を控除することが基本となります。この仕組みが「仕入税額控除」です。
この仕入税額控除を適用するためには、一定の要件を満たす必要があります。具体的には、原則、「一定事項を記載した帳簿」と「請求書等」の保存が求められます。要すれば、ある仕入れ(取引)に関し、仕入税額控除の適用を受けるのであれば、その取引について「自らが作成した記録」(帳簿)と「取引の相手方(売り手)から交付を受けた取引の記録」(請求書等)の両方を保存する必要があります。
「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」においては、一定の記載事項を満たした「帳簿」のほか、取引の相手方から交付を受けた「請求書等」として、現行の区分記載請求書に代えて、原則、適格請求書(インボイス)の保存が必要になるということです。つまり、インボイス制度は、仕入税額控除の適用を受けるための方式であり、インボイスとは仕入税額控除の適用を受けるために保存が求められる「請求書等」の一つということとなります。
現行の区分記載請求書等保存方式における区分記載請求書とインボイスは、取引の相手方(売り手)から買い手が交付を受けたものという意味では同じです。
ただし、その記載事項が異なります。具体的には、インボイスは、区分記載請求書の記載事項に追加して、「登録番号」、「適用税率」及び「税額」の記載が必要となります。実務上、「登録番号」以外の記載事項については、区分記載請求書においても記載されている場合も多く、テクニカルにはそれほど大きな変化ではありません。
「登録番号」について、課税事業者がそれを取得するためには、「登録」を受ける必要があり、その「登録」を受けるためには所轄税務署長に対し「登録申請」を行う必要があります
(「登録」された後、「登録番号」が税務署から通知されます)。
なお、「登録番号」は、法人番号を有する課税事業者であれば「T+法人番号」、個人事業者などそれ以外の課税事業者であれば「T+13桁の数字(新たな固有の番号)」となります。
詳しくは→
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf
当事務所では12月9日に消費税の新たな制度について、セミナーを開催いたしますのでご予定ください。
例年通り、国税庁は7月1日、令和3(2021)年分(同年1月1日時点)についての路線価を発表しました。路線価は、相続税や贈与税を算定する際の基準となるもので、税理士法人にとって重要な指標です。
標準宅地の評価基準額の対前年変動率は、全国平均で0.5%下落(前年:1.6%上昇)と6年ぶりに下落しました。
具体的には、昨年に比べ、最高路線価が上昇した都道府県庁所在都市が38都市から8都市に減少する一方で、横ばいが8都市から17都市へ増加、また下落を示した都市は1都市から22都市へ大幅に増加しています。
名古屋市内では9税務署の最高路線価のうち、中区栄3(大津通り)が6・8%下落するなど9地点中、7地点で前年を下回り、残り2地点は横ばいでした。コロナ禍で訪日観光需要がほぼ蒸発し、政府・自治体の営業規制や外出自粛の影響で飲食・小売店の需要も激減したことが影響しています。
もっとも、令和2年の路線価(令和2年1月1日時点)は新型コロナウイルスが国内で蔓延する直前の時点を対象としているため、路線価自体の単純な前年比較は、Withコロナにおいての地価推移を読み解くうえではさほどの意味を持ちません。
一方、直近の動向では、国土交通省の地価LOOKレポートでは、下落、横ばい地区が減少し上昇地区が増加していることから地価の回復傾向が伺えること、全宅連不動産総合研究所の土地価格DI調査では4月時点の土地価格の動向は、実感値で全国平均がプラスに転じた結果であったことから足元の確実な回復に期待するものです。さらには、一部の緊急事態宣言が解除となり、ワクチン接種の進展、オリンピック開催など、消費マインドの変化にも今後期待が持てます。これらが、不動産市況や地価にどのような影響を及ぼすか、アフターコロナを見据えた社会状況に注視したいと思います。
もっとも、固定資産税の増税要因にもつながるので、地価の急回復もマイナス面があります。
国税庁 路線価を見る→ https://www.rosenka.nta.go.jp/
新聞各紙等の報道によれば、コロナ禍からの復興に向けて、主要先進国は「大きな政府」へと転換がはかられ、異例の規模に膨らんだ財政支出の財源として、法人税の増税が始まろうとしています。
先ず英国は、主要先進国でいち早く法人増税を打ち出し、2023年4月から大企業向けの法人税率を現行の19%から25%に引き上げると発表しました。法人税率の引き上げは1974年以来、約50年ぶりとのこと。英国は金融危機後、企業の投資を呼び込むために2010年時点の28%から足元の19%まで法人税率を下げ、法人税引き下げ競争の口火を切った国です。それがコロナ危機をきっかけに法人税の引き下げ促進の方針を大きく転換したわけです。
続いてアメリカ財務省は、15年間で約275兆円規模の増税となる法人税などの税制改革案を公表しました。連邦法人税率を28%に上げ、3月末に発表した2兆2500億ドルのインフラ投資計画の財源に充てようとするものでした。トランプ前政権が2018年に35%から21%に下げた法人税率を、28%に引き上げ、「恩恵が大企業に偏っていた」(バイデン氏)としてトランプ減税を転換する方針でした。バイデン政権はインフラ投資が柱の「雇用計画」は法人税率の引き上げなどの企業増税で、教育や子育て支援の「家族計画」は個人富裕層の増税で賄おうとしました。この税制改革法案は未だ成立していませんが、バイデン大統領は、増税に反発する野党・共和党とも「喜んで交渉する」と述べ、一部譲歩してでも税制改革を実現させる決意を示しています。
新型コロナウイルス危機への対応で各国の債務が増大する中、英国、米国が本格的な増税路線に転換し、日本など各国の政策にも影響する可能性があります。要注意です。
銀行などが「相続税の節税対策」という営業トークで、高齢の富裕層にタワーマンションの販売を行った結果、相続税申告期限を4年も経過してから税務否認を受け、裁判でも負けてしまった、という驚きの判決があり(東京高等裁判所 2021年04月27日(令和2年(行コ)第242号))、業界紙を賑わせています。
業界紙等によると、この事案は、平成25年9月、父親である被相続人が売買価額15億円で購入した法人向けの単身者用高級賃貸マンション(以下、本件不動産)を相続で取得したことに端を発しています。被相続人らは、生前から銀行との間で本件不動産の購入等による相続税の圧縮効果等を検討しており、被相続人は,平成25年6月に肺がんが発覚した直後、銀行から15億円を借入れた上で本件不動産を購入しました。
本件不動産について、相続人が、評価通達に基づき「4億7,761万円(通達評価額)」と評価し、借入金15億円を債務として計上した上で相続税の申告を行ったところ、国が、評価通達6項を適用し、本件不動産の評価額は「10億4,000万円(鑑定評価額)」であるとして、相続税の更正処分等を行ったことで争いとなったようです。
争点は、本件相続開始時における本件不動産の時価(評価通達の定めによらない評価方法により本件不動産の時価を算定することが許されるか否か)で、東京高裁は、一審の東京地裁の判断を支持し、本件不動産の時価は、評価通達6項に基づく鑑定評価額10億4,000万円と認定しました。
相続の直前で評価差額の大きい物件を購入して、相続税対策を実行した事案です。取得価額(借入金15億円)からすると3分の1程度(4億7,761万円(通達評価額))まで圧縮されていたことになります。
この事案の特徴は、(1)相続後売却を行っていないにも関わらず否認が行われた案件である、(2)相続直前に評価差額の大きい物件購入が銀行主導で行われた案件である、(3)申告期限から4年も経過してから更正が行われた案件である、と言えます。
相続開始前ギリギリで対策をするとやぶ蛇になる、ということがはっきりした事案ですので、早い段階から、納税者やその家族とよく話をしていく必要があるのだと思います。
緊急事態宣言の再延長期間が続きます。
じわじわと感染が広がってゆく中、不安感も高まっていますが、遅ればせながら、国税庁は企業が従業員の感染予防対策費用を負担した場合の取扱いを示しました。
新型コロナに関する感染予防対策として、従業員が負担した次のような費用を従業員に支給した場合に、従業員に対する給与として課税対象となるか明らかにした、ということです。
1. マスク、石鹸、消毒液、消毒用ペーパー、手袋などの消耗品の購入費
2. 従業員の自宅に設置する間仕切り、カーテン、椅子、机、空気清浄機などの備品の購入費
3. 感染が疑われる場合のホテル等の利用料・ホテル等までの交通費など
4. PCR検査費用、室内消毒の外部への委託費用など
原則、「業務のために通常必要な費用」については、その費用を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭は、従業員に対する給与として課税されません。
ただし、業務のために通常必要な費用以外の費用について支給するものや、従業員の家族など従業員以外の者を対象に支給するもの、あらかじめ支給した金銭について業務のために通常必要な費用として使用しなかった場合でもその金銭を企業に返還する必要がないものは、従業員に対する給与として課税対象となります。
企業の業務命令により受けたPCR検査費用も同様に給与として課税されませんが、従業員が自己の判断により受けたPCR検査費用を負担した場合には給与課税となります。
もっとも、企業も従業員もコロナ禍で戦々恐々としているわけですので、もっとおおらかに判断しても良いのではないかと思います。
(注)このFAQは、令和3年5月31日現在の法令等に基づいて作成しています。
国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和3年5月31日更新)(PDF/3,782KB)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/pdf/faq.pdf
2021年3月期の上場企業の決算発表が相次いでいます。ソフトバンクやトヨタ自動車、任天堂などの好業績を見ると、とてもコロナ禍の決算とは思えない数字です。
その中で、新年度(2022年3月期)から適用される新会計ルール(「収益認識に関する会計基準」)の影響で、「大幅減収」となる企業の決算発表があります。
例えば三越伊勢丹HDです。2021年3月期の当社の年間売上高は8,160億円となり、前年度比73%(27%の減収)発表でした。百貨店業界はコロナ禍で影響を受け、来店客の減少に喘いでいたので納得感があります。それが、新年度の売上高計画はなんと、4,470億円で、今年度比で55%(45%の減収)です。と同時に、「営業利益の影響は軽微」とあります。すなわち、事業活動の良し悪しとは関係なく、単に売上高が8,160億円から4,470億円へ約半減するという計画です。
https://www.imhds.co.jp/ja/ir/index.html
百貨店やスーパー等の小売業では、商品が顧客に販売されると同時に仕入先から仕入計上する、「消化仕入」と呼ばれる取引があります。消化仕入契約では、小売業者側では顧客に販売するまでは自社の商品ではないため、価格変動リスクや在庫リスクはもちろん、商品の保管リスクも負担しません。
収益認識会計基準では、小売業者のテナントなど他の当事者が顧客への商品の販売に関与している場合は、小売業者は自らサービスを提供するのか(小売業者が本人として取引をしたか)、それとも、テナントによって商品の販売が提供されるよう手配しているのか(小売業者が代理人として取引)を判断することが求められています。
顧客への商品の販売を小売業者自ら提供する履行義務であると判断され、本人に該当するときは、商品の提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価の総額を収益として認識します。一方、顧客への商品の販売が、テナントなど他の当事者によって提供されるように手配する履行義務であり、「代理人」に該当すると判断されたときは、手数料部分を純額で収益に計上するとされています。
百貨店はあくまでも代理人という解釈で、手数料相当部分のみが売上高に計上されることになります。
一企業で見ると業績の連続性が見えづらくなるので、新会計のルールの意味を理解した上で決算発表をご覧ください。
一旦決定すると、なかなか止まらない・止められないのが行政一般ですが、消費税のインボイス制度のスタートも同じです。
令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が導入されます。インボイス制度においては、現行の区分記載請求書等の保存に代え、「適格請求書(いわゆるインボイス)」等の保存が仕入税額控除を行うための要件となります。
適格請求書を交付できるのは、「適格請求書発行事業者」に限られます。「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請書を提出し、登録を受ける必要があり、登録申請書の提出が令和3年10月1日以降可能となります。
インボイス制度の概要について、次のとおりです。
・適格請求書(インボイス)とは、
売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。具体的には、現行の「区分記載請求書」に「登録番号」、「適用税率」及び「消費税額等」の記載が追加された書類やデータをいいます。
・インボイス制度とは、
<売手側>
売手である登録事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から求められたときは、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります)。
<買手側>
買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。
(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、仕入税額控除の適用を受けることもできます。
インボイス制度の基本的な内容をお知りになりたい方は以下をご覧ください。
https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/invoice/
また、インボイスのデジタル化=電子インボイスの導入機運も高まっています。
しかし、これら令和5年10
月に予定されている適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)については、事業者及び税務官公署の事務に過度な負担を生じさせることから、行政手続コスト削減の方向性に逆行することのないように見直しをする必要があります。
新型コロナウイルス感染症の拡大による危機的な経済情勢下にあっては、準備期間等を考慮すれば、少なくとも適格請求書等保存方式の導入時期については延期すべきです。
見直しにあたっては、事業者の負担と徴税コスト等を考慮し、仕入税額控除方式(インボイス方式を含む。)及び免税点制度等の見直しを含めた消費税のあり方について抜本的に再検討すべきで、特に、免税事業者が適格請求書等を発行できないことに伴い、不当な値下げ等により経営状態が圧迫されることのないよう対策を講じなければなりません。
また、免税事業者があえて課税事業者になることを選択することも考えられますが、インボイス発行の事務負担等から、廃業を余儀なくされる中小事業者が増える可能性があることにも留意すべきです。
4月、皆さんの自宅や会社の固定資産税の通知書が届いていると思います。そこでは、土地の固定資産評価額が大幅に増額されていること、一方で固定資産税そのものは前年度と変化がないこと(増額されていないこと)が確認できると思います。なぜそのようなことになっているのでしょうか?
令和3年度税制改正で大きな問題になったのは土地に係る固定資産税でした。固定資産税は、固定資産の保有と市町村の行政サービスとの間に存する受益関係に着目した財産税と言われ、課税標準は適正な時価とされ、地方税法の規定により、3年ごとに評価替えが実施されています。令和3年度は固定資産税の元となる評価額の、3年に一度の評価替えの年です。
宅地等については、1年前の地価公示価格の7割を目途としており、令和3年度でいえば、令和2年1月1日の地価を基準にして評価をしています。4月に納税通知書を市役所等から郵送するという課税スケジュールに間に合わせるためには1年前の令和2年1月1日の地価に基づく方法はやむを得ないのです。
ところで、令和2年1月1日の地価はコロナ禍直前のインバウンドによる好景気に沸いていた時でした。その3年前に比べると、地価は大きく上昇していたわけです。その結果、お手元の固定資産税の通知書で「評価額」をご覧いただくと、前年と比較して大きく上昇しているのがわかると思います。筆者の自宅の千種区では8%、名古屋市中区の顧問先さんの評価額は40%アップしていました。
一方、固定資産税そのものは前年度と同額になっているはずです。それはコロナ感染症により社会経済活動や国民生活全般を取り巻く状況が大きく変化したことを踏まえ、納税者の負担感に配慮する観点から、令和3年度に限り、負担調整措置等により税額が増加する土地について前年度の税額に据え置く特別な措置が講じられた結果です。
固定資産税評価額は、自身・自社の財産評価の目安になるだけでなく、相続や売買の際の登録免許税の基礎になるものです。たとえ固定資産税そのものは据え置かれたとしても影響がある金額ですので、改めてお手元の固定資産税の通知書をご覧いただきたいと思います。
行政の各手続きに認印廃止の動きが急加速しています。税務関係書類も例外ではありません(これでドイツの税理士さんから、日本ではまだ印鑑が必要なの?と言われなくなります)。
経理の電子化による生産性の向上、テレワークの推進、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資するため、帳簿書類を電子的に保存する際の手続を定めた「電子帳簿保存法」が抜本的に見直されました。
例えば、「スキャナ保存制度」については、領収書等の授受から期日が定められているタイムスタンプの付与や、担当者にオフィスへの出社が求められる相互けん制、定期検査要件の緩和への要望が寄せられたことを受けて、企業の内部統制を求めるこれらの要件を緩和・廃止しつつ、不正行為を抑止する担保措置が検討され実施されることになりました。
電子取引データ保存制度についても、厳格な要件により、大企業を含め多くの事業者が導入することができず、経理のペーパレス化を妨げる要因となっていました。とりわけ、検索要件により、電子取引したデータをそのまま保存できず、紙に印刷するためにオフィスに出社する事例も指摘されていました。
スキャナ保存制度と同様に新たなペナルティを設けつつ、企業にかかるシステムコスト等と、データの真実性・可視性を求める効果のバランスを鑑みて、見直されることとなりました。
また「ハンコのためにオフィスに行くのを止めませんか?」という電子契約システムの宣伝文句がある通り、書面で作成や授受を行ってきた取引関係書類は,今後は電子データによる作成や授受が一般的な方法となるでしょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX)により,初めからデジタルで作成された取引書類の授受方法,活用,処理プロセスの自動化により業務が適正化・効率化され,本来の意味の電子化のメリットが享受できるようになります。
ところで、DXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指す(総務省)とされています。デジタル化はあくまでも手段であり、目的ではない、というわけです。Ⅹは「変革」=Transformationで、この先頭の「Trans-」はⅩと略されるので、DXとなります。
この機会に、経理業務のデジタル化を考えましょう。
「総額表示」とは、消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者が、値札やチラシなどにおいて、あらかじめその取引価格を表示する際に、消費税額(地方消費税額を含みます)を含めた価格を表示することをいいます。
「税抜価格表示」では、レジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分かりにくく、また、同一の商品やサービスでありながら「税抜価格表示」の店と「税込価格表示」の店が混在しているため価格の比較がしづらいといった状況が生じていました。「総額表示の義務付け」は、このような状況を解消するために、消費者が値札等を見れば「消費税相当額を含む支払総額」が一目で分かるようにするためのものです。
実は「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」で、5%から8%、8%から10%へと、二度にわたる消費税率の引上げに際し、事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮する観点から、総額表示義務の特例として、令和3年3月31日までの間、「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」を講じていれば、税込価格を表示することを要しないこととされていました。これがコロナ禍の中、4月1日より原則に戻ることになったのです。
スーパー、コンビニ、百貨店など小売り、外食、ホテル業界などでは、コロナの影響で業況が悪化しているにもかかわらず値札等の貼り替えで手間と費用が掛かってしまいます。「値上げの印象」に不安を持たれる事業者も多いと思います。
なお、総額表示が義務付けられるのは、消費者に対して、商品の販売、役務の提供などを行う場合、いわゆる小売段階の価格表示をするときです。事業者間での取引は総額表示義務の対象とはなりませんので、混乱のないようにしてください。
消費税における「総額表示方式」の概要とその特例(財務省)の詳細はこちらです。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/sougakuhyoji_gaiyou.htm
今回の緊急事態宣言で、時短要請に応じた飲食店には、一日当たり最大6万円の「協力金」が支払われます。この事業規模を無視した補償金の「一律給付」に「あまりに不公平」との不満が噴出する報道にも接します。
新聞紙上にも掲載されていますが、ドイツでも類似の制度があり、補助対象となる「固定費」は、賃貸料、リース料、借入金利、電気・水道などの費用、その他の固定費、従業員の人件費の一部、研修生の費用、固定資産税、税理士報酬など、実態に合った橋渡し支援が行われています。
昨年末、名古屋税理士会とドイツミュンヘン税理士会との間で、ZOOMによる意見交換会「コロナ禍での税務・その他の支援について」が行われ、詳細を知ることができました。この申請は、税理士または会計士などが連邦政府の専用ウエブサイトを通じて行います。会計事務所にとっては事務負担が膨大となりますが、事業規模に応じた扱いができることや、不正受給を防ぐ意味でも、税理士の役割が重要であることを思い知らされました。
当事務所では現在、令和2年分の所得税確定申告シーズンの真っ最中です。
顧問先の皆様にもご足労をおかけしたり、資料収集等の打ち合わせでご厄介をおかけしています。
ところで、令和2年分から、またもや給与所得控除=サラリーマンの必要経費の上限が下がりました。これは、平成30年税制改正時の資料です。
https://cms.tkcnf.com/library/5714af48f88093e32331e44e/602caaf84b4770d917d2cfd9.pdf
今から7年前、(横軸)年収1,500万円の給与所得者の給与所得控除=サラリーマンの必要経費は、245万円でした。それが、230万円→220万円→195万円へと下げられ、そればかりか、平成30年には配偶者控除も不適用となっています。その結果、手取り額が34万円減少したことになっています。
グラフ横軸の給料収入の上限も850万円まで下りてきています。平成30年改正当時、850万円超でかつ実際に負担増になる家計は、給与所得者の中の4%と言われていました。税制上は、給与収入が850万円を超えると高額給与所得者扱いです。(サイレントマジョリティーですね?!)
今回の給与所得控除の改正により、給与収入が850万円超の人は基本的に税負担が増加することになります。これを受けて、子育て世帯や介護世帯の負担が増えないよう「所得金額調整控除」が新設されました。これも令和2年分の所得から適用されます。
さらには、給与所得以外に、公的年金の受給もある場合には、給与所得控除後の給与等の金額(10万円を限度)及び公的年金等に係る雑所得の金額(10万円を限度)の合計額から10万円を控除した残額を、給与所得の金額から控除するという改正もされています。
ややこしいですね。詳しくは、事務所担当者までご質問ください。
教育資金の一括贈与に係る非課税措置は、0歳から30歳未満の子や孫が、両親や祖父母などの直系尊属から学校等に直接支払われる授業料等に充てるための金銭の一括贈与を受けた場合、受贈者一人につき1,500万円までの金額に相当する部分の価額(学校等以外に支払う金銭については500万円)については、信託銀行等金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となる制度です。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku-zoyo/201304/pdf/01.pdf
しかし、令和元年度時点において、導入当初と比べて本特例に係る新規契約数が大幅に減少していることや、資産が子や孫といった家族内のみに非課税で承継されるため、格差の固定化につながりかねない面もあることから、見直しが行われます。
この改正は、令和3年4月1日以後に支払われる教育資金について適用されますので、3月31日までに駆け込みが見込まれます。そろそろ子どもや孫への教育資金贈与をしようと考えている顧問先の皆さんは現行制度を有利に活用してください。
【見直しの背景】
被相続人の孫が財産を相続すると、次世代である子の相続税を1回免れることになるといった租税回避を防止する観点から相続や遺贈(遺言による譲り受け)などで財産を受け取った人が、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外である場合に相続税額が2割加算されます。
しかし、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、孫等が受贈者である場合に贈与者死亡時の残高についてこの2割加算が適用されないこととなっており、また、贈与者が死亡した場合の残高に対する相続税課税については、受贈者がその贈与者からその死亡前3年以内に信託等により取得した信託受益権等についてこの非課税制度の適用を受けたもの(23
歳未満である場合、 学校等に在学している場合、 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合を除きます(以下「除外事項」))とされています。
これらの非課税措置について、富裕層の節税的な利用につながっているとの指摘があり、贈与者死亡時の残高について2割加算が適用されることとされ、贈与者の死亡の日までの年数にかかわらず、贈与者が死亡した時点の残高を相続財産に加算することとされます。
【改正内容】贈与者の死亡に伴う相続税の課税
1. 信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合(上記「除外事項」を除く)には、その死亡の日までの年数にかかわらず、同日における「管理残額」を、受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなすこととされます。
「管理残額」とは、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額をいいます。
2. 上記1.により相続等により取得したものとみなされる管理残額について、贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、当該管理残額に対応する相続税額を、相続税額の2割加算の対象とすることとされます。
(注)上記1.及び2.の改正は、令和3年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用されます。
周知の通り、来春卒業予定の大学生の就職内定率は、企業が正式な内定を出す10月1日時点で69・8%となり、5年ぶりに70%を下回りました。新型コロナウイルス禍で就職活動や経済に影響が出たためで、前年同期からの下げ幅は7・0ポイントと、2008年のリーマン・ショックの影響が直撃した2010年卒の7・4ポイント減以来の大きさとなっています。
新型コロナウイルスの影響で企業説明会などが中止になり、学生の動き出しが遅くなったほか、その後も採用規模が縮小している業界もあり、本当に気の毒です。
そこで、令和3年度税制改正大綱では、新卒・中途採用に向けた税制改正が二通り見込まれることとなりました。
一つは、青色申告書を提出する法人が、令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度において、国内新規雇用者に対して給与等を支給する場合において、新規雇用者給与の総額が、前事業年度よりも2%以上増加させた時は、おおむねその増加額の15%の税額控除ができる制度が導入されます。
「新型コロナウイルス感染症が経済や社会に甚大な影響を及ぼす中、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた企業の経営改革の実現に向け、新卒・中途採用による外部人材の獲得や人材育成への投資を積極的に行う企業に対し、法人税等の税額控除措置が講じられます。」
経済産業省のチラシはこちらです↓
もう一つは、中小企業向けの所得拡大促進税制の見直しと延長です。中小企業全体として雇用を守りつつ、賃上げによる所得拡大を促すことが重要であることから、賃上げだけでなく、雇用を増加させる企業を下支えする観点から、従来の賃上げを要件とする税制ではなく、単に給与等支給額総額が全体で1. 5%以上増加すればよいという制度に簡素化しました。
ウィズコロナ・ポストコロナを見据えた採用計画をお考えいただき、これらの特例措置を有効に活用いただきたいと思います。
令和3年、あけましておめでとうございます。
昨年暮れ、政府はグリーン成長戦略として14分野での政策支援を公表し、連日、新聞経済面の1面に記事が掲載されていました。令和3年はコロナ禍が続く中、この経済成長戦略はとても重要な課題になりそうです。令和3年度税制改正大綱でも税制支援が発表されましたが、その前提にこれらの政策がありますので、簡単にご紹介いたします。
令和2年10月、日本は、「2050年カーボンニュートラル(脱炭素化)」を宣言しました。温暖化への対応を、経済成長の制約やコストとする時代は終わり、国際的にも、成長の機会と捉える時代に突入したということで、従来の発想を転換し、積極的に対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長に繋がる「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策が、グリーン成長戦略です。
税制支援としては、脱炭素化に向けた民間投資を喚起し、温室効果ガス削減効果の高い製品の早期の市場投入による新需要の開拓や、足下の生産工程等の脱炭素化を促進する税制措置が創設されます。
また、コロナ禍の厳しい経営環境の中で、赤字でも果敢に「新たな日常」に向けて、カーボンニュートラル実現に向けた投資等に挑む企業に対し、繰越欠損金の控除上限を引き上げる特例措置が創設されます。
さらに、研究開発税制についてコロナ禍でも積極的に研究開発投資を行うインセンティブを強化し、中長期に向けた投資意欲を下支えするとしています。
2050年の電力需要は、産業・運輸・家庭部門の電化によって、現状の30~50%増加するとの試算があります。熱需要には、水素などの脱炭素燃料、化石燃料からのCO₂の回収・再利用も活用することとなります。
再エネについては、最大限の導入を図るといっても、調整力の確保、送電容量の確保、慣性力の確保、自然条件や社会制約への対応、コスト低減といった課題に直面するため、あらゆる政策を総動員してもなお、全ての電力需要を100%再エネで賄うことは困難と考えることが現実的です。このため、2050年には発電量の約50~60%を太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の再エネで賄うことを、議論を深めて行くに当たっての一つの参考値として、今後の議論を進めることになっています。
14分野とは、①洋上風力産業、②燃料アンモニア産業、③水素産業、④原子力産業、⑤自動車・蓄電池産業、⑥半導体・情報通信産業、⑦船舶産業、⑧物流・人流・土木インフラ産業、⑨食料・農林水産業、⑩航空機産業、⑪カーボンリサイクル産業、⑫住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業、⑬資源循環関連産業、⑭ライフスタイル関連産業です。
洋上風力発電、水素発電、電動車・燃料電池車、ZEH(住宅排出量ゼロ)などなど、これからの日本の重要なワードが続々です。
令和2年12月25日経済産業省より↓
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012-2.pdf